34 〜太宰治side〜 ページ35
「だぁかーらぁー!着ろっつってんだろうが!!」
「僕にはそのようなものは不要……」
「ごちゃごちゃうるっせぇ!……っとに、頭堅ぇな手前は」
苛立ちを隠しもしない中也が、真夜中だというのにギャーギャー騒いでいる。まぁここは中也のマンションなのでいくら騒いでも問題はないのだけれど。
先程から延々と繰り返される口論(主に中也が騒いでいるだけ)も、見ていてさすがに飽きてきた。
「……ねぇ」
私の声に、芥川くんは一瞬で表情を引き締めた。……やだなぁ、そんなに怯えなくたっていいのに。私はもう彼の上司じゃないし。
けれどまぁ、今日だけは特別に助言を与えてあげよう。元、上司らしく。
「それは中也が買ってきたんでしょ?」
床に並べられた紙袋を指差す。中身は当然、どれも高級なものが入っているんだろう。ムカつくけど。
「ねぇ、中也。そこまでして彼が着たがらないのはさぁ……中也の選んだものが気に入らないからじゃない?」
「は?」
ピリッと凍りつく空気に、さすがに悪い状況に進んでいる事を察したのだろう。芥川くんが渋々口を開く。
「そういう、ことでは……」
「ふぅん。じゃあ着れるよね?」
「……」
「着れるよなぁ?芥川?」
笑顔で詰め寄る中也。それでも彼は、言葉にならない声を曖昧に零すだけで頑なに承諾しようとはしない。
はぁ、とため息が出る。相変わらず本当に頑固だなぁ……。
「なら、私の古い浴衣を貸すよ。それでも嫌?」
「!……いいえ。着ます」
「ちっ、何だよ。太宰の時だけ即答しやがって」
中也が悔しそうに呟く。少しだけ、拗ねているようだ。
あれだけ時間をかけて説得しようとしたのに、横から入ってきた私の一言で簡単に釣れてしまっては、そりゃあ気分は良くないだろう。
けれど、中也はそれ以上文句は言わなかった。なんだかんだで面倒見はいいのだ。部下の初デートの為に、わざわざ新品の浴衣をたくさん買ってくる程には。
「しかし、これは……」
「んん?あぁ、中也が買ってきたやつ?」
「あー、気にすんな。こっちで処分すっから」
芥川くんはえ、と声を漏らす。
「その必要はないね。中也も必要以上に虐めないこと」
「んなつもりねーよ。手前と一緒にすんな」
「あの、必要がないというのは……」
控えめに質問してきた芥川くんに笑って返す。
「それは来年、再来年……その先にでも着ればいい」
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さくら餅(プロフ) - 紅玉さん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!無事完結させることができて心底ほっとしております。私は貴方様のコメントにギュンギュンしました!笑本当にありがとうございました!! (2021年2月7日 15時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
紅玉 - 完結おめでとうございます!!!!尊いのと可愛いので私はギュンギュンしまくってました!!!!(ギュンギュンとはキュンキュンの進化系です!!!!) (2021年2月7日 12時) (レス) id: 835185f078 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 人虎に会いたい…。 by芥川 (2020年12月1日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 厳しいわ。 (2020年12月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
さくら餅(プロフ) - ☆天香☆さん» ありがとうございます!!すっごく嬉しいです!文ストはキャラクターひとりひとりが個性的で大好きなので、つい絡ませちゃいます笑コメントありがとうございました!! (2020年3月12日 21時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくら餅 | 作成日時:2019年10月4日 16時