赤い糸8 ページ8
「律くん、こんにちは！」
事務所に入って第一声。驚いて振り向いた律くんにわぁ……！、と感嘆のため息が漏れる。
学生カバンに学ラン。腕に巻かれた生徒会、の文字は彼にとても似合っている。
「久しぶり、律くん！大人っぽくなったね〜……感動！」
少し背伸びをして、わしゃわしゃと頭を撫でると嬉しいのか悔しいのか、そんな表情をしている。
子供扱いされるのが嫌なのか、それでも私にとっては弟のような存在だからつい、甘やかしてしまう。
「お久しぶり、です」
「身長抜かされちゃってる、なんか落ち着かないね」
「はい。ちょっと慣れなくて不思議です」
戸惑っている様子にニコリと微笑むと間に割って霊幻さんが入ってきた。
「わっ……何ですか？」
「これ」
結んだ髪にサラリと指を通す仕草に、思わず鼓動が鳴る。
「は、はい。昨日の髪留めです」
「似合ってんじゃん」
ふ、と微笑む表情がいつもの倍は優しくてすぐにバクバクと心臓が脈打つ。
大人は、ずるい。こんな風にいとも容易く心をかき乱してそれでいて余裕なんだから。
私はこんなにも夢中になって追いかけて、願って祈って、恐れて取り乱して。目も当てられないほど拙くて脆いのに。
「……今日、雨で髪がまとまらなかったのであんまり綺麗に見えないですよね」
弱々しく、苦笑する。
「そうか？いつも通りだろ」
「ひっ、酷い……！いつもボサボサだって言いたいんですか！」
「はぁ？いや、違くてな。いつも綺麗だろってことだよ。ネガティブに受け取りすぎだ」
ポン、と優しく頭に乗せられた手のひらが温かい。撫でられることはなくても彼なりの愛情表現なのか、慈愛が伝わってくる。
「(心が暖かい……)」
奥底まで満たされる感覚は安心して、とても心地良い。両親にされるのとはまた別の嬉しさがある。
身内じゃないのにこんなにも心許せる人がいるなんて、私はとても恵まれている。
だから、そんな人を好きになってしまうのはダメだったのかな。
だとしても、もう止めることはできないし止める気もないのだから悩んだって仕方ないのだけれど。
「あ、すみませ……」
力が抜けて、どさりと落ちた鞄から教科書が溢れ出る。その中から今日の小テストがパラリと開いた。
「えっ」
「あ……」
「マジかよ……」
驚く律くんと、モブくん。それと苦笑いする霊幻さんにいたたまれない気持ちになる。
「今日の、小テストです……」
「よし。……勉強するか！」
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さくら餅(プロフ) - 抹茶さん» ありがたいお言葉頂けて光栄です！！もどかしい時間が長かった分、きっと未来では二人で幸せに暮らしてます！ (2019年9月2日 19時) (
レス) id: d6eb335a4b (このIDを非表示/違反報告)
抹茶(プロフ) - とっっっっても面白かったです！！未来の2人が幸せに暮らしているところが自然と思い浮かびます！ (2019年9月2日 19時) (レス) id: b5b208b71b (このIDを非表示/違反報告)
さくら餅(プロフ) - ただのアニメ好き☆さん» コメントありがとうございます。嬉しいです！応援は執筆の力になりますので頑張ります( ´∀｀) (2019年5月2日 15時) (レス) id: d6eb335a4b (このIDを非表示/違反報告)
ただのアニメ好き☆(プロフ) - この作品もお話とっても素敵です！作者様の事陰ながら応援しています！体調に気をつけて無理をなさらずに更新頑張ってください！ (2019年5月2日 15時) (レス) id: 4ee9350697 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さくら餅 | 作成日時：2019年5月2日 12時
