中学生アプローチ【佐野万次郎】 (ページ5)

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月末の放課後は月に1度のお楽しみタイムだ。

何をするかといっても、来月号の保健だよりを作成するだけなんだけども。

実は保健だよりを手書きすることが結構好きだったりする。

自分で絵を描いてみたりして工夫を凝らして出来た完成品を見ると達成感と満足感でいっぱいになるし、何気に生徒たちからのウケもいいからだ。

今みたいな、放課後の時間に余裕のある時にゆっくり保健だよりを作るこの瞬間が楽しくて仕方がない。

ちなみに6月号のテーマは歯について。6月4日から10日は歯と口の健康週間と呼ばれているため決定した。

あーこのバイ菌のイラストめっちゃ上手く描けたなぁ

なんて1人笑みを浮かべて悦に浸っていると

「Aせんせー何してんの？」

「ほわっっっ！！！」

突然の背後からの声かけに驚いて間抜けな声が出てしまった。

「佐野くん...いつ来たの...」

「ずっと前からいたよ」

そう言った彼は若干呆れ気味だ。

「そうだったの？ごめん集中してて気付かなかった」

「ん、いいよ。んでそれ何描いてんの？」

謝ると彼は笑って私の手元にあるA4サイズの紙を指差した。

「来月号の保健だよりだよ」

「まじ？せんせーが描いてたの？俺あれ毎月すげぇなと思って見てたんだ」

佐野くんが毎月廊下に掲示された保健だよりを立ち止まって見てる姿なんて意外で正直想像できない。

でも私の作ったものがそんな人の目にも止まっているなんて嬉しい限りだ。

「それは嬉しいなぁ、ありがとう」

「せんせーが保健だより書いてるって知ってたら今までの分こっそり持ち帰って観賞用に保管したのになぁー」

「いやそれは絶対ダメだからね？窃盗だよ？」

「冗談だって！！」

ニッと笑う彼にため息が出てしまった。