後日談�� アリスととある男 ページ23
なんてことのない普通の日だった。
庭で遊んでいた私は、急に見知らぬ大人に連れていかれて、見たこともない部屋に閉じ込められた。
そこには一人の血塗れの男が倒れていて、初めはとても怖かったの覚えている。
つい泣き出しそうになったが、ふと気づくとその男も泣いていた。
私は思わずその泣いた跡残る頬に手を滑らせていた。
「ねえっいたいの？」
うわ言のように唸っていた男は、私の姿を目に入れると、急に顔色が変わって慌て始めた。
「っ危ないから、すぐに逃げろ」
「で、でも、道わかんないよ」
「あいつらが来る前に、早く…！」
ぐいぐいと背中を押される。息も絶え絶えで、とても辛そうだ。
「っほおっておけないよ！」
その時に不思議な縁でも結ばれたのか、気づけば私は物言わぬ魂となっていた。
初めは混乱し、当たり散らかし、泣きわめき、ふて寝する。
その繰り返しだった。
誰にも声を拾ってもらえず、自分はなぜここで眺めているだけしかできないのか、何も出来ないのなら今すぐ消えてしまいたいとさえ思った。
しかし無常にも数年が過ぎても、状況が変わることはなかった。
もうどうでも良くなった私は、この体を動かしている男のことを観察することにした。
良い所も悪い所も全て見える。
―あーあ、そんなことしたら…ほらダビデに見つかった。
―へー、魔術ってこんなふうに使えるのか。結構頭いいんだな。
―また脳内で突っ走ってる…もう少し落ち着いて考えればいいものを。
いつしかそれはただの暇つぶしでも、観察でもなく、見守っていく存在になった。ハラハラさせられることもあるし、心臓に悪いのは悪いのだが、どうしてかこいつのことを憎むことは出来なかった。
いつか話が出来たら、そう願うことが増えていった。
私の世界には、この男しかいない。
必然と私と男は一心同体のような、運命共同体のような気持ちになっていた。
そうして晴れて、こいつと話ができるようになった。心底嬉しかった。話したいことは無限にあった。
でも私は出来る限り、黙って見守っておくことにした。
この人生の多くはこいつが歩んだもの。それを今更私があだこだ言っても仕方ない。
「アリスーアリス？」
『……』
「なあーアリスー」
『…なんだ騒々しい』
「へへ、やっと返事した。たまには話そうぜー」
ま、まあ？たまになら？話してやってもいいが？
＿＿＿
以上でおまけは終了です。
長らく閲覧有難うございました。
終わり
ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)
←後日談�� 柚子の心の中
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 116人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
南条(プロフ) - 雪見大福さん» コメントありがとうございます！労いのお言葉大変染みます〜次回作も考え中ですので、気長に待っていただけると有難いです！ (2022年10月28日 8時) (
レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
雪見大福(プロフ) - これからも無理せず頑張ってください！楽しみにしてます (2022年10月22日 23時) (レス) @page23 id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
南条(プロフ) - 朱莉さん» 温かいコメント有難うございます！そのような声をいただけると作者冥利に尽きます。楽しんで読んでいただきありがとうございました！ (2022年10月10日 23時) (レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
朱莉(プロフ) - 完結お疲れ様でした。設定がめちゃくちゃ好みで、いつも更新される度にワクワクしながら拝読してました。凄く面白かったです！素敵な作品をありがとうございました！！ (2022年10月10日 22時) (レス) @page23 id: 4569dbbd6e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：南条 | 作成日時：2022年8月28日 23時
