後日談�� 柚子の心の中 ページ22
あれから、目まぐるしく日常が変わった。
施設を抜け出してからずっとホームレス同然の生活だった。
寝場所だけはしっかりしようと、自分の魔力で昔の家を作り出しそこで生活をしていたが、常に魔力を消費するので疲労と眠気が付き纏い、体調はいつも好調ではなかった。
それが今はふかふかのベッドで寝れるし、食事も一級品のものばかり。こんな贅沢、この世界に来て初めてで、初めて温かいご飯を食べた時は泣いてしまった。
兄は、当たり前を当たり前に享受できる生活を送っていたのだ。
その兄に、復讐をしようと持ちかけるのは些か無謀だったと今ではわかる。
でも確かに以前の兄ならば、協力してくれていた。
前世の兄は、ラノベ好きのどこにでもいるオタクの大学生。家族想いで、特に私には甘かったと思う。
昔からずっと兄は、私を守ってくれていた。
引っ込み思案だった私を外に連れ出して遊んでくれたし、勉強が分からなかったら教えてくれた。
いつでも私がどうしたいかを聞いてくれたし、それを尊重してくれた。
中学生になって、そんな兄が一時期鬱陶しくなって冷たく当たったりしたけど、でも兄は一切怒らなかった。
小さな反抗期もすぐに終わって、また普通の関係に戻った。
その時ぐらいから兄はアニメにはまり、中でもラノベ小説にどっぷりだった。
私には何がいいのか分からなかったけど、ありえない物語だからこそ面白いのだとそう言っていた。
この魔界は兄の言うありえない世界そのもの。兄はここへ来て嬉しかったのだろうか。
兄がここでどのような人生を歩んできたかは分からない。
でもここでの家族も大切に思えるくらいの何かがあったから、かつての家族である私のお願いでも、断ったんだろう。
「お兄ちゃん」
「ん？」
「この世界に来て良かった？」
「……ああ」
昔のように頭を撫でられる。
「母上やダヴィデ、ビオレにリリー、それにゆずがいるからな。家族が増えるのも、悪くない」
その笑顔は昔の兄そっくりで、私は思わず笑い出してしまった。
家族想いなのは、いつまで経っても変わらないのね。
変わったところもあるけれど、変わっていない部分もある。それに私は、ほっとするのだった。
後日談�� アリスととある男→←後日談�� ウォルターパークにて
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南条(プロフ) - 雪見大福さん» コメントありがとうございます！労いのお言葉大変染みます〜次回作も考え中ですので、気長に待っていただけると有難いです！ (2022年10月28日 8時) (
レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
雪見大福(プロフ) - これからも無理せず頑張ってください！楽しみにしてます (2022年10月22日 23時) (レス) @page23 id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
南条(プロフ) - 朱莉さん» 温かいコメント有難うございます！そのような声をいただけると作者冥利に尽きます。楽しんで読んでいただきありがとうございました！ (2022年10月10日 23時) (レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
朱莉(プロフ) - 完結お疲れ様でした。設定がめちゃくちゃ好みで、いつも更新される度にワクワクしながら拝読してました。凄く面白かったです！素敵な作品をありがとうございました！！ (2022年10月10日 22時) (レス) @page23 id: 4569dbbd6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：南条 | 作成日時：2022年8月28日 23時
