103 それぞれの物語 ページ17
「なんで……」
『恐らく妹君に注ぎ込まれた魔力の影響だろう』
「ゆずの？」
『ああ、願ったものを描き出す能力だ。お前が願ったことの手助けになったのだろう』
それはつまり、アリスにいてほしいという俺の願いが本人にばれているわけで。
とんでもない羞恥心を感じて、思わず顔を覆ってしまう。しかし、顔を隠したい相手は俺のなかにいるので、無駄なあがきだった。
『……私は、今こうしてお前と話せるのが嬉しい』
「え」
『ずっと、一人でお前のことを見ているだけだと思っていたから』
案外、俺たちは似た者同士だったのかもしれない。
「俺も……アリスに会えてよかった」
二人のアリスは、こうして一つのアリスへと成っていく。
＊
ルキフグスの逮捕により、ニュースの勢いは増した。
なんでもルキフグスは人体実験の他にも、ゆずが身体に打ち込んでいた違法ドーピングの件や、様々な余罪があり、大罪人としての烙印が押された。
世論は俺たちに同情と興味の眼差しを。それは炎上や批判の類いよりもマシなものだったが、それでも大勢の視線は疲れる。
終末期に入ったこともあり、暫くは家の中に引きこもることにした。クラスメイトと遊ぶのは当分の間お預けだ。
アザゼルさんはわざわざ菓子折りをもって謝りに来た。アザゼルさんはなんも悪くなくない？
それから話を聞くと裏で取引をしていた連中もしょっぴいたようだ。
またルキフグスが言っていた通り、どうやら俺たちの身体には前代未聞の力が秘めてられている可能性があるらしい。
俺の昔の悪周期のこともあるし、それは嘘じゃないと思う。だからストレスや魔力を溜め込まないように、定期的発散することが義務付けられた。
ゆずは、あれから目を覚ましていない。
ただでさえ家系魔術の副作用で眠るというのに、無理なドーピングに魔力枯渇のせいで、深い昏睡状態に陥ってしまった。
俺は母上にお願いして、ゆずを家で寝かせている。ゆずはおれの家族だ。もう一人にはしない。
ゆずが目を覚ませば、うちの養子になることを提案するつもりだ。母上も快く承諾してくれた。
だから今はただゆずが目を覚ますの願うのみ。
＊
「アリスちゃん！ゆずちゃんが目を覚ましたって！」
騒動から何日が経っただろう。
そんな母上の声を聞いて俺は部屋を飛び出し、ゆずのもとへと走って向かう。
『よかったな』
「ああ！」
新たな家族と、俺はこの魔界を生きていく。
アスモデウス・アリス――ただ一人の悪魔として。
終
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南条(プロフ) - 雪見大福さん» コメントありがとうございます！労いのお言葉大変染みます〜次回作も考え中ですので、気長に待っていただけると有難いです！ (2022年10月28日 8時) (
レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
雪見大福(プロフ) - これからも無理せず頑張ってください！楽しみにしてます (2022年10月22日 23時) (レス) @page23 id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
南条(プロフ) - 朱莉さん» 温かいコメント有難うございます！そのような声をいただけると作者冥利に尽きます。楽しんで読んでいただきありがとうございました！ (2022年10月10日 23時) (レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
朱莉(プロフ) - 完結お疲れ様でした。設定がめちゃくちゃ好みで、いつも更新される度にワクワクしながら拝読してました。凄く面白かったです！素敵な作品をありがとうございました！！ (2022年10月10日 22時) (レス) @page23 id: 4569dbbd6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：南条 | 作成日時：2022年8月28日 23時
