102 好転、そして ページ16
「私を舐めてもらっては困る」
アリスは洗脳に全く動じることなく、そのまま炎の剣で斬りかかる。
寸でのところでルキフグスは避けると、二人の間は大きく距離が開かれる。
ルキフグスは、今の状況に心底動揺していた。
家系魔術が効かないなんてこと、生まれてこの方一度もなかったのだから。
「駒になどなるものか。貴様には罪を認めてしかるべき機関で贖ってもらう」
「……はは、面白いこと言うね。俺は、君のこと案じてるんだよ?」
「貴様の手など借りなくても、私は、私たちは、生きていける」
私がここにいることが、その証明だ。
そう言って、アリスは前へ踏み込む。
ルキフグスは、近距離戦が得意だ。洗脳がかけやすく、又かけてしまえばこちらの勝ちだから。
しかし今の相手は、洗脳にかからない。つまり最悪の状況だった。
急いで距離を取ろうとするが、アリスの方が一歩早く、思いきり腹から胸にかけて斬りつけられる。
その場で少しよろける。浅い切り傷だが血が流れる。
そうしているうちに、部下を無効化にしたアザゼルが、アリスに加勢してくる。
どちらも近距離を得意とする強者だ。アザゼルの方に関しては、恐らく洗脳のかけ方が見破られている。
二人は一年程同じ13冠だったのだ。見抜いていてもおかしくはない。
不利な状況を感じ取ったルキフグスは、逃げるが勝ちと屋根に一発魔術をぶつけて大きな穴を開けた。瓦礫が降ってくる中、急いで翼を出して上空へと逃げ出す。
しかし、空へと飛び出すことはできなかった。
なぜならルキフグスの上空に降り注ぐ瓦礫の上にアザゼルがいたから。
アザゼルは瓦礫を思いきり蹴りつける。ルキフグスは豪速で落ちる瓦礫から避けることもできず、下敷きとなる。
洗脳を主戦術とするルキフグスは、肉弾戦に冠してはからきしだった。
こうしてルキフグスは、あっけなく逮捕された。
*
目を覚ますと、すべてが終わっていた。
ベッドの上に寝かされていた身体を起こす。見慣れた自分の家だ。
俺は、どうなったんだっけ。
『ようやく起きたか』
どこからともなく声が聞こえる。聞きなれた自分の声のようだが、自分が喋ったわけではない。
キョロキョロと辺りを見回すが、誰もいない。
『馬鹿者。外にいるわけないだろう』
外にいない?つまり…中。ということは…
「アリス……?」
『そうだ』
表情はわからないが、声色からいかにも“呆れた”ということが伝わってくる。
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南条(プロフ) - 雪見大福さん» コメントありがとうございます!労いのお言葉大変染みます〜次回作も考え中ですので、気長に待っていただけると有難いです! (2022年10月28日 8時) (レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
雪見大福(プロフ) - これからも無理せず頑張ってください!楽しみにしてます (2022年10月22日 23時) (レス) @page23 id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
南条(プロフ) - 朱莉さん» 温かいコメント有難うございます!そのような声をいただけると作者冥利に尽きます。楽しんで読んでいただきありがとうございました! (2022年10月10日 23時) (レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
朱莉(プロフ) - 完結お疲れ様でした。設定がめちゃくちゃ好みで、いつも更新される度にワクワクしながら拝読してました。凄く面白かったです!素敵な作品をありがとうございました!! (2022年10月10日 22時) (レス) @page23 id: 4569dbbd6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:南条 | 作成日時:2022年8月28日 23時