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98 これからは ページ12

「……わけないじゃん」

妹はなにかをつぶやくと、再び襲い掛かってくる。
妹の体は悲鳴を上げているはずだ。動きの切れが悪い。それでも、妹は向かってくる。

「なあ、ゆず。お願いだから、もうやめてくれ。俺の事は嫌いでもいいからさ、自分を大事にしてほしい」
「……」
「俺はゆずが大切だから」

そうして俺は攻撃を防ぐの止める。無防備になった脇腹に、ぐさりと剣の切っ先が刺さる。
ああ、いってぇ。

ずっと避けていた攻撃を、急にまともに受けたから、妹は明らかに動揺していた。

「な、んで」
「俺が死んだら、お前は幸せになるんだろう?」

俺が死んだら泣く人は、多分それなりにいるだろう。でも、妹にはいないかもしれない。
俺だけが、妹と向き合える。妹のためなら、死んでもいい。それが俺がここまで生きていた意味かもしれない。

「お前には笑っていてほしい」

少し深く刺さりすぎたせいか、血がだらだらと止まることなく流れていく。脂汗がすごい。
痛みで、思考が鈍る。放っておけばさすがに死ぬ傷だ。

すると妹は剣を放りなげて、俺の元へと駆けてくる。

ああ、ひと思いにやってくれ…。


しかし妹は、膝をついた俺を地面に寝かせると、脇腹に回復魔術をかけ始めた。
背反する妹の行動に、俺は驚きを隠せない。

「ゆ、ゆず?」
「…そんなわけ、ないじゃん。確かに、お兄ちゃんが羨ましかったよ。
私、お兄ちゃんが生きてるって知ってすぐにお兄ちゃんに会いに行ったの。そこで笑ってるお兄ちゃんを見て心底『なんで?』って思った。
だから最初はお兄ちゃんを利用した計画を立ててた。昔から私をわかってくれてたから、手伝ってくれるって信じて疑わなかった。

でもお兄ちゃんは、すっかり身も心も悪魔になってて…拒否されたときはこんなにも私と違うんだってびっくりしたけど……嫌いなわけないじゃん…っ!」

妹の目から涙がこぼれる。
ようやく妹の本音が聞けた。俺は妹の顔に手を伸ばして、涙を拭う。

「お兄ちゃんがいなくなったら、私一人になるんだよ…」
「…悪かった」

殺されようとしたのは流石に軽率だったか。妹の気持ちをわかってるつもりだったから…

――俺の大事な妹。最初の動機はどうであれ、こうして会いに来てくれて、本当によかった。
これからは絶対に一人にしない。この世界で生きていくには、互いに支え合うのが大事だから。

「今までお前の事見つけてあげられなくてごめんな」
「……っばか」

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南条(プロフ) - 雪見大福さん» コメントありがとうございます!労いのお言葉大変染みます〜次回作も考え中ですので、気長に待っていただけると有難いです! (2022年10月28日 8時) (レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
雪見大福(プロフ) - これからも無理せず頑張ってください!楽しみにしてます (2022年10月22日 23時) (レス) @page23 id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
南条(プロフ) - 朱莉さん» 温かいコメント有難うございます!そのような声をいただけると作者冥利に尽きます。楽しんで読んでいただきありがとうございました! (2022年10月10日 23時) (レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
朱莉(プロフ) - 完結お疲れ様でした。設定がめちゃくちゃ好みで、いつも更新される度にワクワクしながら拝読してました。凄く面白かったです!素敵な作品をありがとうございました!! (2022年10月10日 22時) (レス) @page23 id: 4569dbbd6e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:南条 | 作成日時:2022年8月28日 23時

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