38.落とされる ページ8
「お待たせしました」
約束の時間10分前にいつもの駅で待ち合わせ。
「仕事お疲れ様。じゃあ、行こっか」
スッと手を繋がれて歩き出す。
最初こそドキドキし過ぎて手汗ばっか気にしていたけど、回数を重ねるごとに慣れていった。
大野さんが連れてきてくれたのは、小洒落たイタリアンバル。
「ここ、ピザが美味しいんだって」
大野さんがオススメを注文してくれて、今日はお酒も少し飲むことになった。
「Aちゃんはお酒強い方？」
「いえ、強くなくて、すぐ酔っ払っちゃいます。でも、お酒の場は好きです」
「へぇ。じゃあ、今日は俺に付き合ってくれる？明日休みでしょ？」
カズといい大野さんといい、上目遣いの使い方が上手過ぎて頷いてしまう。
「ふふ、ありがと」
大野さんとのご飯はいつも楽しい。
仕事の話もするけど、全然苦じゃないし、大野さんのデザインの話を聞いてるのが面白い。
「でね、Aちゃんに付き合ってもらった時のデザインが決まりそうなんだ」
「本当ですか？良かったですね！見たいな〜」
「見せてあげるよ。明日、時間ある？」
「いいんですか？やったぁ」
明日も大野さんに会えるのとデザインを見れるのとで嬉しくなる。
「ふふ、Aちゃん酔ってる？たまにタメ口になってる笑」
「あ…すみませんっ。少し酔ってきました」
やばい、大野さんは専務なのに！
「全然タメ口でいいよ〜。俺気にしないし、むしろ、距離が縮まった感じがして良い」
大野さんも酔ってきたのか、いつもよりニコニコが止まらない。
可愛い…
ぽけーっと大野さんを見ていたら、「なーにーーー？そんな見つめないでよぉ」と照れ始めた。
「大野さん可愛すぎません？」
「なーに言ってんの。Aちゃんの方が可愛いからぁ」
「ふふふ、ありがとうございます」
大野さんはいっぱい褒めてくれるから嬉しい。
「大野さんは褒め上手ですよね」
「んー？そうかなぁ。俺は思ってること正直に言ってるだけだよ」
そう言って上目遣いで見てくる大野さんはあざとい。
「んもうっ、大野さん、それあざとすぎます〜」
「へへ〜、Aちゃんを落としたいからね」
「へ？」
大野さんは相変わらずニコニコしていて、酔ってるから本気なのかも分からない。
落としたいって
それって…
「俺さぁ… Aちゃんのこと好き」
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作者名：美紗翔 | 作成日時：2022年7月11日 23時
