好きなのに(s.s) (ページ20)

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19.一歩ページ20

「そういえば、この間、Aちゃんに会ったんでしょ？どう、進展は」

Aと会ってから2ヶ月が経った。
ニノとのドラマも始まって、世間でも俺の会社でも話題になっていた。

「この間って、2ヶ月も前だけど」

「俺、詳しく聞いてないもん。翔くん、隠すからぁ」

お互い仕事で忙しくて、智くんと飲みに来たのも2ヶ月ぶりだ。

「ごめんごめん。でも、特に何もないよ。あれから会ってないし、連絡も取ってない」

「ふーん…つまんな」

何故か不貞腐れた智くんに苦笑いをして、追加のビールを注文する。

「でもさ、Aもニノも何も変わってなかった。2人とも、俺と今でも仲良いって言ってくれて…離れたのは俺からなのにさ」

「……まあ、俺は翔くんの気持ち分かるよ。でも、何の意地張ってんのか分かんない。素直になればいいのに」

意地？
俺、そんなの張ってる？

「Aちゃんとの再会は素直になるための一歩なんじゃないの？」

.

「おい、櫻井。またアリサと仕事だぞ」

そう岡田さんに言われて行った仕事は、またAのCM撮影で、今回は某ブライダル雑誌のイメージガールに選ばれて、その撮影だった。

「なんだよ、嬉しそうじゃないな。あ、分かった。アリサの花嫁姿に緊張してんだろ」

Aの楽屋に行く途中で、岡田さんが俺の顔を見て笑った。

「…別に、そんなんじゃ…」

そう答えたけど、実際は岡田さんの言う通りで、更に前回会った時から一度もAと連絡を取ったりもしていなかったから、どんな顔をして会えば良いのか分からなかった。

智くんには素直にって言われたけど、素直ってなんだ？
俺は今まで素直じゃなかったってこと？

そんなことを考えてたら、楽屋の前まで着いて、岡田さんがドアをノックする。

「はぁい」

Aの声が聞こえて、ぎゅっと心臓を握られたみたいになった。

岡田さんがドアを開けて挨拶をして、岡田さんの横に並んで「宜しくお願いします」のところで一緒にお辞儀をする。

「はい、今回も宜しくお願いします」

Aからの返事が聞こえて頭を上げて、鏡の前で座っているAを見る。

「おぉ…」

岡田さんが感嘆な声を上げる。
俺もハッと息を飲み込んでいたのに、いつの間にか「…綺麗」と口から溢れていた。