好きなのに(s.s) (ページ1)

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0.プロローグページ1

「翔？」

懐かしい声に名前を呼ばれて振り返る。

「やっぱり、翔だぁ」

俺の顔を見てふわっと微笑む君は数年ぶりの再会なのに、何も変わっていない。

「久しぶりだね」

「……あぁ…久しぶり」

「元気にしてた？」

「うん…まあ……」

ふいっと君から目を逸らして答える。

「……翔、あのさ…」

遠慮がちに話し始める君は何も変わってない。

昔から俺の後ろについて「翔くん、翔くん」と言っていたあの頃から…

「アリサ、スタンバイだって」

「あっ…ごめん。呼ばれちゃった。翔、これ…」

君が俺の手を取って紙を握らせる。

それから、君は呼ばれた方へと歩いていく。

その姿をぼーっと見つめてから、君が握らせた手をゆっくり開く。

紙には君の字で電話番号が書かれていた。

昔と変わらない電話番号に、変わったのは俺だったのだと気づかされる。

「おい、櫻井。リハ始まるぞ」

上司から声を掛けられ、ハッとして慌ててその紙をスーツのポケットにグシャッと入れた。

「はい、今行きます！」