新入社員の旅 (ページ7)

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新入社員は夜明けを待つ«番外編» ページ7

…いつからこうなってしまったんだろう。
覚えたての歌を、ベランダで歌う。
『くだらないことなんかでさ、笑いあえた君が
いなくなって…』
…もうやめよう。夜遅いから迷惑だろうし
？「おねーちゃん歌上手いなぁ。なんかそういう仕事してはる？」
『いや、べ、べつに……』
？「あぁ、そうや、俺芸人やて」
『し、しってます…友保さんですよね？』
友保「うお、こわ」
『聞き慣れた声でしたので』
友保「事務所一緒やしな」
『…えぇ』
友保「どしたん？」

金属バット友保さん。
隣に住んでたんだ。
…ベランダ越しでもわかる。とても心配してくれているような、優しい声。…とても、穏やかな声
聞いたこともないような声だった。でも、
どこか寂しそうだったから、つい、聞いた

『友保さんこそ、…何か、あったんですか？』
友保「ん？別にないでぇ、大丈夫」
『隠さんで、話して欲しいんです』
友保「心配なんよA。仕事でも変に無理してるんのんとちゃいます？」
『大丈夫、です』
友保「ほら」
『ほら、って…。』
友保「そういうとこ、無理してるやろ？」
『…』
友保「俺はいいから、話して」
『…ｯ。』

煙草の煙。私は少し苦手だけど…
友保さん、吸ってるのかな。
私は…友保さんに話せること、あるかな。

『実は昔、親に虐待されてました。』

…考えるより口が先に動いた。

友保「…へぇ、ええで、続けて」

友保さんびっくりしただろうけど、
正直私が1番びびってる。
…こんなの、ばらすつもりじゃ…

『ネグレクトされて、気が向いた時に殴られてたんです。でもご飯はあるから生きていられたし、逆に食べないと殴られたからっ…ｯ』

泣きながら話した。友保さんは時々
うんとかそうなんやとか、相槌を打って
話を聞いてくれた。嬉しかった。

友保「…そっかぁ、よお頑張ったわ。俺なら挫けてまうがなそんなん。」
『…ｯｸﾞｽｯ』
友保「…後でちゃんと面と向かって話そ。」
『ｯえ…？』
友保「今日はさ、もう朝方やしお互い寝ようや」
『ｯはい…』
友保「また明日さ、色々持ってお宅お邪魔するわ」
『へ？ちょっと！？』
友保「ほなおやすみ〜(笑)」
『と、友保さん！？』