初めての2人きり ページ29
.
.
梅くんと現場が被ったのはあれから1週間後だった。
その間に届けに行けた気がしなくもないけど、梅くんがそう言ってくれてたから結局この日になってしまった。
スタジオに入ると梅くんはもう先に座っていた。
『う、梅くん。おはよう』
「あ、おはよう」
『こないだ忘れてた腕時計持ってきたよ』
「ああ、ありがとう。助かった」
『遅くなってごめんね』
「俺が現場被った時でいいって言ったし。ありがとう」
そう言って腕時計を装着した梅くんは「これこれ」としっくりきているようで安心した。
椅子に置いてたカバンを退けてくれて、そこをぽんぽんと叩いたから座れと言うことだろう。座らせてもらって私も台本を取り出した。
たった1週間だったけど、梅くんの物が家にあるということだけですごく意識してしまった。腕時計が目に入る度にドキドキした。
それが今ちゃんと梅くんの左腕に装着されているから、帰ったらもう無いんだと思うと繋がりが消えてしまうようで寂しく感じる。
「なんでそんな顔してんの?」
『…えっ?変な顔だった?』
「いや、思い詰めたような顔。なんかあった?」
『なんか…あったかもしれない』
「じゃあ飯行くか」
『へ?』
「飯。これ終わって何か用事ある?」
梅くんとご飯…?2人で?そんなの大丈夫?私死なない?
『用事ない!めちゃくちゃ暇です!』
「暇なんだ。俺も暇だし。じゃあ暇人同士だな」
これは2人きりっぽい。今からもうドキドキが止まらない。心臓は止まりそう。どうしよう。
「おはようございま〜す。あ、梅ちゃんとAちゃん」
『宏太朗さんお疲れ様です』
「お疲れ〜。あ、梅ちゃん今日は時計してるんだね」
「うるせえよ」
「なんで!?」
梅くんが宏太朗さんにツンツンする境界線が分からない…
「Aちゃんと梅ちゃん今日暇?終わったら江口さんとご飯行くんだけど、一緒にどう?」
「無理。予定ある。俺もAも」
「あっ、そうなの?次の現場とか?」
「や、飯行くから」
「え!?」
今まで見たことないくらい目を開いてびっくりした宏太朗さん。しかも声が大きい。
『ごめんなさい』
「いいんだよ〜!行っといで!僕江口さんに奢って貰うし!」
「何の話だよ」
「わあ〜いいなぁ、どこ食べに行くの?焼肉?なに?何食べたいの?」
「うるせえな」
正直2人きりだからご飯が喉を通るか危うい所だけど、楽しみなのは変わらない。自分がまだ未成年でよかった。これでお酒なんて飲んじゃったら記憶飛ぶ気がする。
547人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「男性声優」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
p@n@(プロフ) - サチさん» コメントありがとうございます!続きはしっかりハピエン(?)にするつもりではいるので泣かないでください……!こらからもよろしくお願い致します! (2021年3月17日 23時) (レス) id: 82332159e0 (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 初コメ失礼します。ずっと読ませて頂きました。とても楽しい作品でしたが、最後でビックリしてしまいました(泣)どうか無事で…と願うばかりです。続きも頑張って下さい! (2021年3月17日 23時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
p@n@(プロフ) - くるみさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです…ペースが早くて大丈夫かなと不安だったので安心しました…!これからも楽しんで頂けるように頑張りますのでよろしくお願い致します! (2021年3月13日 22時) (レス) id: 82332159e0 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ - 初コメント失礼します!いつもお話が進んでいく度に楽しみになっていって、、、こんなに面白いお話作ってくれてありがとうございます!続き楽しみにしております! (2021年3月13日 20時) (レス) id: 449ab25172 (このIDを非表示/違反報告)
p@n@(プロフ) - みやさん» コメントありがとうございます!お返事遅くなり申し訳ありません。楽しんで頂けて嬉しいです!これからもよろしくお願いします! (2021年2月27日 8時) (レス) id: 82332159e0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:p@n@ | 作成日時:2021年2月23日 10時