君で溢れる【梅原裕一郎】

卒業 ページ12

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季節が秋から冬になって、春になろうとしていた頃。Aが高校を卒業する日がやってきた。
3年間本当に早くてあっという間。

もちろん卒業式には行った。席も前列の方をキープ。
隣に座っていた誰かのお母さんに「若いパパさんですね」と言われてちょっと照れた。なんでか分からないけど「ありがとうございます」と言った。

卒業生が続々と入場してくる。Aはどこだとスマホを構えながらキョロキョロしていたら、列の中にもキョロキョロしてる子が一人。間違いない。かわいい俺の妹だ。
小さく手を振ってきて、自分も目立たないように振り返した。

卒業証書授与の時間になり、生徒一人一人の名前が呼ばれる。最後に、代表者一名が卒業証書を取りに行く。

そのことを俺は当日まで知らなくては今どきの卒業式ってこんなんなんだと思いながら動画をまわしていた。

Aのクラスも一通り呼び終わり、もう動画止めようとしたその時。

「代表者、中島A」
『はい』

びっくりして声が出そうだった。Aが代表者！？
壇上に上がって校長先生から卒業証書を受け取って、また席に戻る。その姿を見て泣きそうになった。てか泣いた。

感動に浸ってる間に、式が終わって卒業生が退場する。もう涙でぼやけてAの姿なんて確認出来なかった。

保護者に紛れて(俺も保護者)教室に移動したら、もう既に先生の話が始まっていて生徒は真剣な眼差しでそれを聞いていた。

Aも同じで、若干泣いているように見える。その姿を見て、また感極まってしまった。いつの間にこんな成長していたんだろうか。人の話を聞いて涙を流すような優しい子に育ってくれて良かった。

話が終わって最後にクラス全員の集合写真を撮る雰囲気になった。教卓の前に並んでわちゃわちゃしてる感じがとても青春。それも終わって解散となった。

『よっちゃん！』
「A、卒業おめでとう」
『ありがと！よっちゃん泣いてたでしょ』
「泣いてねーし」
『あ、それ泣いてた時に言うやつじゃん〜大好き！』
「A！？」

クラス全員がいる場で抱き着いてきたから若干ビビりはしたものの、Aのブラコン具合はみんな知ってるらしく「あれがお兄さんか！」となっていた。

教室を出て、正門の前で近くにいた人に写真を撮ってもらった。
入学した頃より、ほんの少しだけ背が伸びて、髪も伸びた。顔立ちもまだあどけなさは残るけど大人っぽくなった。
ずっとかわいい妹でいてくれとただ願うばかり。

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