*:.｡. プロ野球 短編集 *･.*

｜吉川尚輝｜ ページ42

仕事でミスを犯してしまった。







上司を含む 周りに迷惑をかけてしまい、
いい環境で仕事をさせてもらっているのに、あんな失敗をしてしまう自分が不甲斐ない。









家に戻ってからも
沈んだ気持ちはそのままで
テレビの音もあまりに耳に入ってこない中、ケータイを開くとあることに気付く。







「あ、今日…」








数日前、
尚輝と夜に電話をする約束をしていた日だった。







練習が終わったあと
彼のほうからかけてくると言っていたけれど…









声を聞いたら絶対に会いたくなる









そう思うと、
疲れている尚輝にまで迷惑をかけてしまいそうだと考えが膨らんだ。









するとタイムリーに鳴り始めた手の中のケータイ。


もちろん その相手は尚輝で
沈んだ気持ちのままだけど、電話に出ることにした。









「もしもし…」


「あ、あいり。仕事終わった？」


「うん。尚輝も練習終わったの？」


「そう。そんで今から家に帰るところ。」


「そっか…」









やっぱり彼の声を聞くとなんだか安心できて、
少し泣きそうになるのを堪えながら
平然を装って話をした。








それなのに






「…ちょっと待って、あいり。」


「なに？」









「何かあった？」









なんで彼には何でもお見通しなんだろう









「なんで…」


「声少し震えてるし、なんか元気なさそうだなって。 どうした？」


「…仕事で、少しミスしちゃって。
それで…」







話づらそうにする私を気遣うように
尚輝が口を開いた。






「もう家着いてるよな。」


「え、うん。」


「１時間かかんないくらいで着くから、少し待ってて？」

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