*:.｡. プロ野球 短編集 *･.*

｜石川慎吾｜ ページ20

「おかえり」


「ん、」


帰宅した慎吾に声をかけたが
返ってきた返事はとてもか細いものだった。






重たい足取りで、トボトボとリビングに向かうその背中を見た私からも、
自然とため息が溢れてしまった。






今日試合があった慎吾。

でもその内容は良いものでなくて、
エラーをしてしまったりしたようだ。





別に八つ当たりをするわけでもなく、
ただただ落ち込んでいる彼。






後を追い、リビングに入ると
ソファに浅く座り
いつもの明るく元気な様子とは程遠いくらい
悲しい表情の彼が目に入った。







「慎吾、」


隣に座って顔を覗きながら呼びかけると

明らかに無理をしている作り笑いを
浮かべた彼がこっちを向いた。




その表情に胸が締め付けられて
私は彼の肩に頭を預けた。









「大丈夫だよ、





今日はたまたま調子が良くなかっただけだから。





プロ野球選手だって、そんな日くらいあるよ。」




「あいり…」




「慎吾が頑張ってるのはよく分かってるから。




だから、…大丈夫。」









最後に慎吾の目を見て
そう伝えると、






今度は私の首元に顔を埋めた慎吾。






そのまま背に腕が回ってきて
ギュッと抱きしめられる。



密着すると
彼が震えていることがわかって
私も抱きしめ返した。






「らしくないよなあ、
俺、切り替えられるかな…」



「出来るよ、慎吾なら大丈夫。」



「見とってくれる？」



「もちろん。」





顔を上げた慎吾には
やっと少し笑顔が戻っていた。




やっぱり彼は笑った顔がよく似合う。









上手くいかないときだってあるよ。



頼りないかもしれないけど、
そんなときは私を頼ってほしい。



落ち込んだときに全てを受け止められる存在でありたい。

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