眠り姫 (ページ15)

今日:2 hit、昨日:8 hit、合計:26,148 hit

61 ページ15

(人1) side

点滴が終わって、
さっきまでいたはずのスタジオの駐車場に翔太と車をとりに行く。

正直、

大きな病気

っていう感じは全くしなくて。

40℃くらいあったらしい熱も37℃に下がってるし、
貧血も、数秒で立ちくらみが収まるくらいになった。

私元気じゃん！って思うし、思いたいし。

…まあ紹介状をもらった以上は病院には行かなきゃいけないんだけど。

でも私とは相対的に、全く話さない翔太。

話したかと思えば、

大丈夫？

きつくない？

病院戻る？

なんて、さっきのことばっかり。

自分の荷物も私の荷物もあるのに全部片手で持って、
もう片方の手は私の手をギュッと握ってる。

まるで離さない、って言ってるみたいに。

話を聞いている途中からずっと困り顔というか、
泣く2歩くらい手前というか、

明らかにいつものテンションではなくて。

今から子ども達を迎えにいくのに…
そんな顔だったらバレちゃうよって言いたいくらい。

渡「お前さ…」

『…んー？』

渡「調子悪いとか…言えよ。
無理してご飯とか子ども見るとか、しなくていいし、
俺もママもいるし、マネージャーもいるじゃん。
その…、心配だし…

今は？きつくない？」

帽子にマスクでサングラスの2人組。

手を繋いでるのにわざわざちょっとかがんでキャップの中を心配そうに覗き込んでくる。

結婚前よりかなり丸くなって、
今じゃ過保護の塊になった翔太はとっても優しい。

相変わらず辛そうな顔をする翔太を見てるのが辛くなって、

『大丈夫、めっちゃ元気だから！今。笑』

って本心で明るく返したのに、

渡「…ん、よかった」

浮かない返事を返す翔太の手は
私の手をしっかりと握り直して、

渡「まじで無理すんなよ」

何回も何回も、
その言葉を口にした。