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土曜日、夜。
硝子張りのエレベーターに反射する私は、
どこか落ち着かない表情をしていた。
"土曜の夜8時、XXXっていう店に行って"
"俺には分かんねん。山田さんなら大丈夫！"
"誤解は、早いうちに解いた方がええ"
のんちゃん。
態々、予約取ってくれたの？
こんなお洒落で予約するのも大変そうなフレンチを、
淳太くんと、私の為に？
背の高いビルの
最上階にあるレストランに近づいていくにつれ、
身体の末端がどんどん冷えていくようだ。
緊張と不安と期待が私の心をぐちゃぐちゃにして、
泣きそうになる。
レストランに着いて｢予約していた小瀧です｣と名乗ると
窓際の見晴らしの良い席に通された。
外を見れば沢山のビルが建ち並んでいて、
見たことないほど美しい夜景が広がっている。
席に着くと店員さんに飲み物を先に頼むか聞かれ、
連れから来てからにすると伝えると
｢承知致しました｣と微笑み去って行った。
のんちゃんは、
淳太くんのこと本当に大切に思ってるんだね。
私、のんちゃんの言葉信じるから。
今の私でも、淳太くんの役に立てるって。
淳太くんを救えるって、信じるから。
だから神様、
もう少しだけ勇気をください。
後のことはどうなってもいい。
あと一歩、踏み出す勇気をください。
｢ あれ、なんで山田さんが居るん？小瀧は？ ｣
パッと顔を上げると、
茶色のジャケットを着こなした淳太くんが立っていて。
久しぶりに見た淳太くんは、少し表情が硬い気がした。
だけど着飾った淳太くんがキラキラしていない訳がなくて
やっぱり彼は芸能人なんだと思い知らされる。
テーブルに近づいてきた淳太くんは驚いていたけれど、
店員さんにエスコートされて席に着いた。
『 ごめんなさい。…… 小瀧さんは、来ないです 』
そう言うと、淳太くんは
｢何なんアイツやる事イケメンすぎやろ｣と笑う。
良かった、拒絶されなくて。
少しだけ指先の感覚が戻った気がした。
淳太くんは店員さんに差し出されたメニューを受け取ると
パラパラと見て、詰まることなく注文していく。
偶にアレルギーはあるか、とか、ワインは大丈夫か、と
此方を見て聞いてくれて、｢大丈夫です｣と伝えると
｢了解｣と微笑むから心臓に悪い。
私はただ、
慣れたように店員さんと会話する淳太くんを
見つめることしか出来なかった。
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作者名：nameless | 作成日時：2021年10月20日 17時
