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.Junta
初めて君を見たんは、何年前やったかな。
確かあの時のライヴで
"淳太くん 大好き"
そう、ただ純粋な気持ちが書かれた団扇を持った君を
スタンド席で見つけたのが初めてやった。
君ね、すんごい目立つんよ。
やってさ、周りみんな笑顔で手振ってくれてる中で
君だけ。
ほんま、君だけやで。
俺に向けた団扇の柄をぎゅっと握って、泣いとるんは。
"〇〇して"って書いてくれてる団扇やったらさ？
泣いてる子なんて放っておけんから、
………… って言うのは建前で、
君の願いを、一番に叶えたのにさ。
気づいてたかなぁ …… どうやろな。
毎回、ただ真っ直ぐ気持ちを伝えてくれる君には、
特別なファンサをしてた、つもり。
周りのファンの子には申し訳ないけど、
他の子の団扇の内容と被らないようなファンサを
君に向けて送ってた。
いつやったか、
"私…？"と半信半疑で自分を指さしている君に
うんうんと頷いてやれば、
泣きながら、けど凄い嬉しそうに団扇を小さく振ってた。
あー、きっと心も綺麗なんやろうな、なんて
穢れなんて知らないような涙を流す君を見ながら、
漠然とそう思った。
どれだけ忙しくても、無理な仕事を押し付けられても、
君の顔を思い出せば頑張れた。
泣くくらい応援してくれる人が居るんやから、
此処で負けるわけにはいかんやろ、って。
そして何度も何度も君を思い出すようになって、
"あの子の為に" という思いが、
こんな子を、………… 君を、
"好きになりたい" という思いに変わった。
やけど俺はアイドルで、君は、ファン。
よくみんなさ、
アイドルとプライベートで会える確率なんて
ほぼ無い、そんな奇跡的なこと起きないって言うやんか。
それは、俺も同じで。
広い都会の中、
プライベートで君に会える確率は、多分ゼロ。
やって君は、俺にとっては何万人のうちの一人でしかなくて。
名前も年齢も、出身地も、何も知らない。
希望も何もないやん。好きになっても。
やからさ、付き合いたいとかは思わなかった。
正直、プライベートで仲良くなって、
前みたいになるのが怖かったっていうのもあるけど、
何より、君にライヴ以外で会えないって分かってたし。
それから暫く経った、
久しぶりに東京でメンバー全員が揃った食事会。
…………ずっとずっと、君の声を聞きたかったんよ。
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作者名：nameless | 作成日時：2021年10月20日 17時
