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言いたいことは沢山あるのに、
私の中の "良い子" が顔を出して、口を噤ませる。
きっと彼にも彼なりの事情があって
持って行き場のない思いをしているのは、私だけじゃない。
淳太くんからしてみれば10個近く年下で
まだまだ子供かもしれないけれど、
もう子供じゃないから。子供と思われたくないから。
…… だから我儘は、言わない。言えない。
『 …… お久しぶりです。お元気でした、？
私今、丁度バイトが終わって帰るところです 』
" っAちゃ、 "
『 あ！先週の音楽番組の生歌、最高でした。
WESTはやっぱり生歌が一番似合いますね〜。
あ、あとほらっ 』
" ごめん、 "
『 …… っ 』
" ごめんっ …… "
何度も何度も、"ごめん" という言葉だけが脳に響く。
そんな声で、そんな言葉を伝えられてしまったら
最悪な未来しか、想像出来ない。
久しぶりに聞いた 電話越しの大好きな彼の声は、
か弱くて頼りなくて、今にも消えてしまいそうだった。
そんなに、苦しそうに泣かないで。
私は、ひとりになるのは嫌だけれど
誰かを待つのは、得意なんだ。
『 淳太くん。近くに、照史くんはいますか？ 』
" っ、…… おらん、"
『 …… 濱ちゃんは？のんちゃんは？他のメンバーは？ 』
" っだれも、おらん …… っ "
『 …… 淳太くん。
淳太くんがもし今、辛い思いをしているのなら、
大切な人の近くに居なくちゃ駄目です。
ひとりになっちゃ駄目です 』
" 最近、うまく話せへんの …っ… 余裕ない、っ "
『 話さなくても傍に居てくれます。
それは "きっと" じゃなくて、"絶対" です。
ジャニーズWESTはそういう人たちの集まりだって、
淳太くんが1番知ってるじゃないですか 』
淳太くんの過去を、
本当の、等身大の姿を知って、分かったことがある。
ひとりぼっちじゃ、人は過去を乗り越えられない。
自分を肯定してあげられない。
人を幸せにするという、一番の幸せに気付けない。
母を亡くし、父に捨てられて
まだ小さかった私は腫れ物のように扱われ
たらい回しにされて、
最後に行き着いたのは、遠い親戚の営む児童養護施設。
そこで世界一大好きで 大切な叔母と出会った。
…… ああ、そうか。そうだった。
叔母の笑顔と、
子供たちの 生きることに希望を持った瞳を見て、
私は …… 誰かを幸せにする職に就きたいと思ったんだ。
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作者名：nameless | 作成日時：2021年10月20日 17時
