memory.5 ページ7
カイルside
テントの中に入るとまず視界に映り込んだのは桃色の髪の少女だ
身体の至る箇所にガーゼや絆創膏等が貼られ、余程傷が多かったんだと想像できた
少女はすやすやと小さな寝息をたて、未だに眠り続けている
「私も治療して驚いたわ。ここまで酷い怪我はそうそうないのよ...」
姉さんは少女の側に近寄り、彼女の手当をした部分を悲しむように見つめる
そうだ。姉さんは昔から僕を手当してくれたから、怪我の状態の区別は付く
つまり、この子の怪我は間違いなく重度のものだ。
一体どうして？
「ねえ、カイル。この子は湖に倒れていたのよね？」
僕は考えていたが姉さんから問いだされた。取り敢えず質問を返答した
「そう。でも、正確には湖に落ちた？のだと思う」
「落ちた？」
僕がそう発言したのは、湖で大きな音がしたから。それに記憶を辿ってみると前には崖らしきものもあった
必然的に湖に落ちた、と解釈する事が出来る
そう言うと、姉さんは途端に目を大きく見開いた
「それ、本当なのね？」
「う、うん。そうだと思うよ...」
その現場を見た訳ではないので完全に肯定する事は出来なかったけど、でもそうとしか考えられなかったので否定はしなかった
姉さんは少女に一瞬視線を移した後、僕を見据えて口を開いた
「この傷は鋭利なものだったの。でも、何かしらの武器でついたものとは何処か違うのよ。どことなく不規則な線を描いてるの」
......っ！？
嫌な予感がした。まだ断言出来ないけれど...
「も、もしかしたら、この子は...！？」
その時だった
グオオォォォォォ！！！
外からけたましい叫び声が聞こえた。勿論人間のものじゃない
「...そうか。そういうことか」
僕は確信した
少女が何故あれほどの傷を負っていたのか。何故湖に浮かんでいたのか
「姉さん！！僕が行ってくる！！」
「待って！私も行くわ！！」
僕は使い慣れた剣を、姉さんは弓を手に取りテントから抜ける
あたりを見渡す。そしたら湖へと続く道に大きな何かがあるのを捉えた
そう。あれは......
生き物を無差別に襲う"怪物"だ
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