memory.3 ページ5
カイルside
「......」
あれから数時間、空は更に暗闇に染まり月を強く輝かせていた
空だけではなく...僕の心も暗くさせて
父さんが亡くなってから力を求めるようになった。父さんが教えてくれた剣術をより強固なものへと高めていった
姉さんは僕の稽古に付き合ってくれた。けれど、とある日の夜に怪物との戦闘で大怪我を負ってしまった時に、姉さんは涙をこぼしながら言った
『もういい。貴方は、もう...傷付かないでほしい。もし、何かあったら......』
僕が強くなかったから、僕が弱いせいで、姉さんを泣かせてしまった
更に鍛練に励むようになった。日が落ち、ブキミナ鳥の鳴き声が聞こえる時間帯になろうが構わず剣を振り続けた
少しでも、強くなろうと...誰も失いたくない。その一心で...
なのに...
僕は強くならなかった
力だけじゃない。心も
「...くっ......！！」
ねえ、どうしたら強くなるんだ？
僕は、一体どうすればいいのか？
答えを、教えてくれよ......
ﾊﾞｼｬ......
「...え？」
ふと水が弾ける音が響いた
何かいるのかと思い、すかさず腰に装着されている護身用の短剣を引き抜く
まさか、怪物か？
それほど離れていない所には姉さんがいるはず
何としても倒さなくては...！！
音が聞こえた場所まで少しずつ距離を詰めていく。気を抜くな。少しの油断が命取りだ
握られている短剣に更に力が入る
そして、僕は"それ"を視界に捉えた
「...！？」
驚きを隠せなかった
怪物ではなかっただけ良かったのかもしれない。けれど、僕は"それ"の正体に思わず目を疑った
桃色の長髪と小柄な体躯が特徴的な少女が湖に浮かんでいた
身体中が傷だらけで
僕は急いで少女を湖から引き上げ、息があるか確認をした
「......
よかった。生きている...」
取り敢えず生存している事に安堵した。しかし、何故こんなに生傷があるのだろうか。誰かに襲われたのか...？
「いや、今はテントに戻って早く治療をしてやらないと...」
少女を背中に乗せ、僕はテントへと急いで向かった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
