memory.10 ページ12
ネールside
「......ぅう...」
ふと何処からか小さな声が聞こえた
それは隣の少女からのものだった
「あ...」
私は少し驚いた。彼女は閉じていた眼を少しずつ開いていったから
そんな彼女に気付いてカイルはこちらに来た
「もう起きたのか?」
優しく彼女を見つめる。そこからカイルがどれだけこの子を心配しているのかが伝わった
「んんっ......」
女の子はゆっくりと上体を起こした。何処となくぼやけた瞳で辺りを見回した
「...え?こ、ここは...?」
幼さの残る声で呟いた
「君、大丈夫か?もう怪我は平気なのか?」
カイルが彼女の目線に合わせて尋ねる
...質問を質問で返してると思ったりも少しだけした
「怪我?...そうだ、私は怪物に襲われて、それで...あれ?どうなったんだっけ?」
女の子は自身に貼られていた絆創膏を見る。覚えていないのね...
「君は湖に落ちたんだ。僕が助けて、姉さんが治療してくれたんだ。それに君を襲った怪物は倒したから安心して」
「そ、そうだったんですか...ありがとうございます」
女の子はペコリと頭を下げた。とても礼儀正しい子だな
「私も長居する訳にはいきませんし...失礼しますね。このご恩は忘れません」
そう言うと女の子はすぐに立ちあがりここから出ていこうとした
......早すぎないかしら!?まだ夜よ!?
それに、まだ傷は癒えていないはず...
私は引き留めようと声をかけた
「ちょっと待って!そんな怪我で歩いたら身体に響くわ。それにこんな暗い中で出歩くのは危ないし...」
女の子は一度私の方に振り向いた。そこから見えた瞳は何処か強い決意を感じた
「行かなくちゃいけない所があるんです。これくらいの怪我、なんてことはありません...」
この子...無理をしてる。強く腕を抑えて、震えを止めようとしてる。やっぱり痛みを感じてる
どうにか止めようとしたけれどどこか気が引けた
なら、どうすれば?
「そうか。だったら僕達も行くよ」
そう提案してきたのは、弟のカイルだった
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