memory.9 ページ11
カイルside
『ふたりのかみさま』
それが数百年前の出来事を書いた本の名前。ただ、所々文字が掠れて後半の辺りは読めなかった
でも、前半の話だけでも大体の概要は掴めている
終わりを司る《闇の神》が下した残酷な裁き
人々の信仰を得られず悲しみ、光の女神へと向ける妬み
彼を憎いとも思ったし、哀れとも思った
この話は姉さんも知っている。小さい頃は二人でよく絵本を読んでいたものだ
「何時になれば、この世界は穏やかになるのかな...」
僕は空を見つめた。綺麗な星たちが暗闇を輝かせていた
神は見守っていると記されていたから、もしかしたらこの空の上にいるんじゃないか、と子供じみた考えを抱いた
「カイル」
姉さんが僕を呼ぶ声がした
「貴方は...神を、あの本のことを信じているの?」
「......少しは、ね。この世界はこうして存在するんだから、それだけでも神はいるってそう思えるから」
僕は口角を上げた
******
テントに戻り、僕らは朝に備えて支度をした
そして、あの少女の容態も確認する
「大分落ち着いてるみたい。これなら朝には目を覚ましてるでしょう」
「そうか...よかったよ」
姉さんはタオルを水に浸らせる
「本当によかった。助けられて...」
ボソリと呟いた
僕達二人は、父さんが亡くなった数日後に近くの孤児院に引き取られた
そこでは何十人もの幼い子供が、親を失っている。その施設でよく子供達が泣いているのを見た
だから、人を失う辛さを更に思い知った。愛してくれた人達がいない悲しみを
僕が15になった年に孤児院を離れた
姉さんと共に各地で困っている人を助ける日々を送る事にした
報酬の金があればいくらかは孤児院に仕送りをした。長い間世話になったのでこれで恩を返せればと思ったからだ
孤児院の近くに暮らすのも出来たけれど僕は退屈だと思った
怪物が徘徊する世界は危険だからとあまり外を出れなかったから、少しでも広い世界を見たかった
それなら、各地を巡りながら人々の手助けをしましょう、と姉さんは話を持ち掛けた
父さんも、困っている人がいたら怪物がいても未知の場所でも助けに行っていたから......
でも、そこでも悲惨な現実を突き付けられるばかりだった。人が死に、町や村を無くしもう居場所がないと泣き叫ぶ人もいた
だから、その度に胸が来るしかった
(人が死ぬところは見たくない...)
だから良かった。一つの命を助けられて
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