クロ短編集 【黒尾鉄朗】

迷子になりました　part1 ページ5

「………ここどこ……」

迷子になって、約1時間。

幼馴染のクロと久しぶりにでかけることになって都内へと来ていたが、クロが(あまりにも)女の人から声をかけられるので私はクロを置いて先々歩いていたら、

……全然知らない所まで来ていた。

そもそもクロが女の人から声かけられすぎるのが私は気に食わない。
だってクロが好きだから。
でも私のそんな気持ちなんて、
クロは分かっていないだろう。

「……携帯も充電切れてるし、どうしよっかなぁ………」

私は昔から方向音痴なのでよく迷子になっていた。

その時は必ずと言っていいほど、

「A見つけた」

クロが私を探して見つけてくれた。

(……今日も、見つけてくれるかな。でも私が勝手にはぐれたしなぁ。女の人に声かけられてる時、すっごい嬉しそうな顔してたし……)

思い出すだけで、腹が立つ。

「……クロのばか……」

「君、どうしたの？今1人？」

パッと顔をあげると、見覚えのない男の人が目の前にいた。

「……いえ、そんなんじゃないです。幼馴染とはぐれちゃって」

「そっかぁ〜、かわいそうだね。ねぇ、もしよかったら今から俺と遊びに行かない？」

何を言ってるんだろう、この人は。
そんなもの行くはずがない。

「行きません」

「そんなこと言わずにさぁ〜。行こうよ」

あまりにも男の人がしつこく迫ってくる。

(………まさかこれってナンパ…？)

生まれてこのかた、ナンパなんてされたことがないのでよく分からないがこの状況から早く脱したい。

「ほら、行くよ〜？俺と一緒にいた方が楽しいって」

そう言って男は私の腕を無理矢理引っ張る。

「は？！ちょっと離して！！」

離そうとしても離れない。

(どうしよう……！！クロ助けて……！)

「A見ーつけた」

「え…………？」

後ろを向くと、
クロが立っていた。

「……………クロ……」

クロは私を男から離し、

「なぁ。あんたさ、人のもん勝手に取っちゃいけませんって知らないんですか？こいつ、俺のなんで。勝手に手、ださないでもらえますか？」

そう言ってクロは私を自分の方へと寄せる。

「…………うるせぇな。分かったよ」

男はそう言ってどこかへ行った。

「…………助かった…。クロありが」

ありがとう、と言おうとした瞬間、
クロに思いっきり抱きしめられた。

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