私が思い出すあなたは私を愛しているよ【青】 (ページ6)

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信号が青になる瞬間
大勢の人が足を進める気配にふと我に返る

もう、5年にもなるんだ

あれだけ願っていた翔太のデビュー

彼のデビューが心の底から嬉しいのに
その隣に今一緒にいられないことに寂しく感じてる

翔太はこの5年間
少しでも記憶の片隅に私のことを思い出してくれたのかな

なんて、振られた私にはそんな事想う資格なんてないのに

強くなったと言い聞かせて
ひたすら走り続けてきた

綺麗事だと知りながらも
本音じゃない事を悟りながらも
それでも綺麗事を本音だと言いはって
歯を食いしばってきた

そういう潔さも尊いと思いながら

・

感傷に浸っていた自分の頬を軽く叩いて気合を入れ直す

今からは大事な商談
先輩の顔に泥を塗るわけにはいかない

ひとつ息を吐いて、またヒールを鳴らす

・

クライアント「これ君が考えてきたの？それとも前田くんの？」

商談中、先方の冷たい声が割って入る

『前田からは引継ぎの際に過去のお取引等は聞いておりまして、それを基に私が考えさせていただきました。なにか、ご不明点等ございますでしょうか』

ク「う～ん、分からないっていうよりなんだろうね。
　そもそも全体的に浅いよね考えが」

『と、申しますのは…』

ク「いやいや何をいってるのAさん。
　それをコンサルしてくれるのがあなたの仕事でしょ？安易に答えを聞くのは、職務放棄なんじゃないの？違う？」

あ、やばい

それを自分で悟った時点で、背中に汗が一筋通るのがわかる

『……いえ、仰る通りかと思います。
　ご迷惑おかけして大変申し訳ございませんでした。
　もう一度出直してくるので、再度ご提案の企画を頂戴することはできますでしょうか』

なんとか先方に再度アポの時間を頂く約束をして、その場を去った

くやしい

比べなくても分かる前田先輩の偉大さと自分のふがいなさ

気持ちがあがったと思えば、すぐ落ちるこの感情の起伏に追いつかない