私が思い出すあなたは私を愛しているよ【青】 (ページ28)

今日:8 hit、昨日:16 hit、合計:633,406 hit

28 ページ28

課長「A、例の件どうなってる？」

『特に問題なく、順調に進んでます』

後輩「Aさん、ここの資料ってどこに…？」

『あぁ、それね。
　資料室の、えーと確か入ってすぐの棚に資料あるから！
一度探してそれでもなかったらまた聞いて。』

「はい！ありがとうございます。」

前田「やっほ～、頑張ってる～？」

『…前田さんまた来たんですか。』

前田「おいおい。冷たいな。」

あのチケットをなくしたと気づいた日から
特別なにかあるわけでもなく
いつもと変わらない忙しい日々を過ごしてる

・

あの日はたくさん泣いて
しおりにも泣きじゃくって電話して
昨晩飲み明かしたばかりだというのに
結局また家まで来てくれて２人でまたお酒を飲んだ

どれだけ忘れたふりして強がっても
この5年間頑張ってこれたのは
まぎれもなく翔太との思い出のおかげで

そして最後の最後まで
私の心を支えてくれたのは
やっぱり翔太との思い出の品だった

『しおりさ、昨日私に聞いたでしょ？
　“もう全て許したの？”って』

しおり「うん」

『私多分、頭では分かったふりしてたけど
　心ではずっとあの日の答えを知りたかったんだと思う。
　なんで翔太はあんなに突然いなくなったのか』

しおり「…うん」

『でもここ数日ずっと翔太の事考えて
　翔太との思い出に浸って気付いたの。』

『明確な答えなんて、何もなかったんじゃないかなって』

しおり「…全然分かんない」

真顔で聞き返してくるしおりについ吹き出す

『だって考えてみてよ。あの翔太だよ？
　不器用で、口下手で、すぐ強がるんだよ？
　相当多忙な時期だったし、きっと抱えきれなくなっちゃたんじゃないかな』

しおり「それで、Aは納得できたわけ？」

『うん、あの日の事も全部許すことにしたの』

許すまで5年もかかっちゃった、って笑う私に
泣きそうな顔で見つめるしおり

しおり「Aはそれでいいの？後悔しない？」

『うん。しないよ。』

だって、最後の彼と私を繋いでいたものさえ
なくなってしまったのだから

きっとそういう事なんだと思う
きっと、そうでなくちゃダメなんだと思う

なら良かった、って微笑んでくれるしおり
強がっている私に気付かない振りをしてくれる彼女に感謝した