私が思い出すあなたは私を愛しているよ【青】 (ページ35)

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『、翔太』

少し息を切らして私の前で立ち止まる翔太

あの頃はまだ幼さが残っていた顔立ち
今はなんだか男の人って感じで
あの頃よりもほんの少しだけ広くなった肩幅

肌は相変わらず透き通っていて
ほんのり香る匂いはあの頃と変わらなかった

渡「っ久しぶり」

『…久しぶり、だね』

あれだけ会いたいと願っていた
たくさんテレビを通して見ていた
温かい思い出の中で何度も思い返していた

その一方で
もう遠くからしか見ることしかできないことを悟って
あなたの幸せを願うと決めたはずなのに

それなのに
彼の瞳に再び映ることができただけで
直接名前を呼ばれただけで
こんなにも満たされていく私の心

渡「元気そうで、安心した」

『…うん。翔太も』

渡「あの、さ、」

久「Aさん！まじで時間やばいっす！！！」

突然後ろから肩を掴まれて
その勢いに少しよろけながら
思わず久部くんの腕にしがみついた

『っごめん。そうだね、行こっか』

久「すいません。もうすぐそこ曲がった所ですよね？」

久部くんの声に軽くうなづいて
翔太に向き直す

『翔太ごめん、もう行かなきゃ』

渡「…うん」

最後に翔太に笑顔を向けて
既に先に歩き出している久部くんの方へ踵を返した

デビューのお祝いだって
これからずっと応援してるって
彼に伝えられるチャンスだったのに

きっとあれ以上話したら
ばれてしまう気がしたんだ

翔太を必死に忘れようとして
強がってもがいてるこんな弱い私がいることを

渡「っA、」

踵を返し、一歩踏み出そうとした途端
ふわっと優しくつかまれる右手首

また自然と重なる視線

そして、

真っすぐな目であなたは言うんだ

渡「あの日の俺を許さないでいいよ」