Adagio Cantabile 2 (ページ6)

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ギリギリまで仕事をしていたい気持ちはもちろんあった。でもやっぱりどうしても諦めたくなかったから、入院して治療に専念することを決めた。手術すらできないほど身体のあちこちに巣食った病への治療はもちろん順調にいくことなんて一つもなくて、強い薬を入れてどれだけ副作用に苦しんでも俺の中の悪者は増えていく一方だった。そのたびに薬の内容や方法を変えて、手を替え品を替え色んな方法を探って、俺はみるみるうちにボロボロになっていった。爛れてひりつく口内炎のせいでまともにものを食べられないし、筋肉が落ちて感覚障害を起こした手足では今まで普通に出来ていた何もかもが難しい。色白を通り越して青白くかさついた肌や髪の抜け落ちた頭を隠す医療用帽子は、俺をみるからに“重病人”みたいにさせた。……覚悟していたことではあったけれど、想像していた何倍もキツくてしんどくて。でもそれはきっと俺に限った事じゃなくて、そばで見ていたみんなにとっても、だと思う。見慣れたカタチや当たり前だった機能がどんどん失われていくのって、それをただ受け入れるしかないのって、思った以上に辛い。

――鎮痛剤でも抑えられない痛みが全身を襲う。声にならない声を上げる俺の身体をさすってくれた樹の手はちいさく震えていて、痺れて力の入らない手を握ってくれていたこーちは怖い顔をしていた。だいじょーぶよ、って言いたいのに、悲鳴じみた呻き声しか出てこない喉を恨んでは、生理的な涙に視界が滲む。

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