Adagio Cantabile 2 (ページ4)

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collapse(🦁) ページ4

“もう少しだけ”を諦められなかった🦁とみんな。
🦔視点

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樹が緊急入院したというメッセージを受信したのは、単独ロケの帰り、新幹線に乗ってすぐのことだった。

『樹倒れた。救急車でいつもの病院運ばれて、そのまま入院だって』

突然すぎるその連絡の送り主は樹と一緒にバラエティ収録をしていたジェシーで、彼らしからぬ硬く素っ気ない文面に嫌な胸騒ぎがする。

『今の様子は？』

『眠ってる。熱高くて苦しそう』

急いで打ったメッセージにはすぐ返信が来た。熱？昨日はそんな様子、全然無かったのに。

樹が病に倒れたのは、半年ほど前のことだ。事務所の検診で引っかかった彼は『何もなかったビビった〜ってトークのネタにしてやる』と言って精密検査へ行き、とんでもない大病をひっさげて帰ってきた。何度も泣きながらの話し合いを重ねた末、絶対に仕事に穴を開けたくないという彼ができるだけ無理せず仕事と治療を両立できるように、全力でサポートしていこうと俺たちは決めた。病気が発覚してからこれまで、騙し騙しなんとか外来通院での治療だけでやってきた樹。最近は薬の影響で吐き気や倦怠感が大きかったようで、もともと華奢な骨格だった身体がさらにペラペラになっていた。それでも『やっぱりお前らと仕事して、歌ってるのがいちばん楽しい、寿命延びそう』なんて笑う樹をそばで見ていたら、俺たちはどうしたって彼を“病人”ではなく“アイドル”として生かしてやりたくなってしまっていたのだ。それが全てだった。

『病室にお医者さん来て、もう限界だって言われた。ずっと樹には入院するように言ってたんだって』

『それでも、どうしてもやだ、お願いって言うから頑張って色々調整してたけど、もう無理なんだって』

『みんな泣いてる、樹目覚めないよ』

ジェシーからのメッセージが次々と画面に増えていく。強く握りしめた拳に爪がくい込んで痛い。

『こーち、どうしよう』

ぽん、と増えたメッセージの白枠に、ひとつぶの雫が落ちた。