Limit(🦁と🦅) ページ21
『collapse』の続き。🦅視点
Xリクエスト企画��
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内臓を押し潰されたみたいな嘔吐き声、乾咳。俺が見舞いに到着してから今までの数時間、樹はガーグルベースンを抱え込んだまま、ひっきりなしにその薄い背中を波打たせている。
「っはぁ、えほ、……げぇ、っ」
「樹……苦しいね」
「ぉ、えﾞッ……、なん、で、はけ、ねぇの……っ」
激しい嘔気とは裏腹に、彼の口から零れてくるのは唾液ばかりであった。胃の中身が空っぽなのだ。吐けるモノなんて、もうとっくに尽きている。それなのに、この忌々しい症状は彼を解放してくれる気などさらさら無いようで、闘病生活ですっかり衰えたなけなしの体力がみるみる削られていく様が目に見えてわかるようだった。
あの日、現場で倒れて救急搬送されてから、樹の病状は悪化してゆくばかりで希望の欠片すら見えない日々が続いている。病気が発覚して以来、樹は弱音を吐くことも逃げ出すこともせず治療へ向き合ってきた。疾患そのものからくる不調を抱えながら、尚且つ仕事を全うしながらの通院治療なんて、心身ともに生半可なしんどさではなかったはずだ。外来で点滴を打ってきた後はいつにもまして辛そうで、それでも、心配する俺たちに『大丈夫だって』『薬が効いてる証拠じゃね』なんて平気を装って笑っていた。彼は強かった。俺たちも皆、彼はこのまま病を克服するのだと信じて疑わなかった。……ずっとそう、信じていたかった。
あまりに惨く、残酷な現実。思い知らされた、彼に巣食う病の恐ろしさと、絶望的な未来予測。
……痩せ細って骨ばかりになった樹の背中を、俺はそっと撫でた。掌の下で彼はまた大きく震え、空嘔吐きを繰り返す。
「げほ、っ……ぇ゙、ッ」
「――樹、辛いね、」
「っ、ほくと……も、やだ……」
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作者名：灰 | 作成日時：2023年12月11日 23時
