Adagio Cantabile 2 (ページ18)

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「っ、はあっ……はあ、……ッ」

舞台裏にはけた途端、目眩と胸痛にたまらず崩れ落ちた。咄嗟に横にいた慎太郎が支えてくれて、何とか床に倒れ込まずに保つ。

「樹っ、大丈夫！？」

「げほっげほ、っはあ、ごめ……めっちゃ……痛、っ……」

「……っ、俺に体重かけていいから。ゆっくり息して」

「ッ、……っい、はあっ……」

慎太郎の腕に支えられて、俺はなんとかパイプ椅子に腰を下ろした。必死に呼吸を整えようと深く息を吸っては吐いてを繰り返す。……痛い。苦しい。痛い。きもちわるい。……だけど、そんな苦痛にひれ伏してしまおうとは思えなかった。だってこの痛みは、俺が必死にしがみついた、――しがみつこうとしている証だ。

「っはあ、はあっ……ふ、っ……」

まだ終われない。アンコールが残っている。終わるわけにいかないのだ。スタッフさんが酸素スプレーを持って、こちらへ駆け寄ってくる。

「ラスト、いける？……アンコールの準備はもう出来てるから」

「ッ……、っん……」

いつの間にか隣に来ていた北斗が背中をさすってくれた。……大丈夫。やれるよ。視線を上げて頷けば、スタッフさんはみんな準備に戻っていった。SixTONESコールと、賑やかなざわめきが場内から聞こえ始める。

「――樹、」

北斗が俺の肩を抱きながら、小さく名前を呼んだ。

「無理はしないで」

「ぅ、ん」

「……でもね、大丈夫。行けるよ、俺たちが全力で支える。みんなが樹を信じてる」

「っ、……ん、……」

「樹ならやれる。……最後まで、やり遂げてみせよう」

「……、……おぅ、」

北斗がぎゅっと俺の手を握った。その温もりに安心して深く息を吸う。……大丈夫。まだ立てる。まだ歌える。まだ踊れる。……まだ、俺は。

「っ……スタンバイ、お願いします！」

スタッフさんの声がかかって、慎太郎がパイプ椅子から俺を引き上げた。差し出された北斗の手を支えになんとか立ち上がる。

「おっ、いけんの？」

「楽しもうね、樹」

「行こう、みんな待ってるよ」

きょもが、ジェシーが、こーちが、こちらへ手を差し出して笑いかけてくれる。……大丈夫だ、みんながいる。みんなが俺を支えてくれている。

「ッ、……おう！」

ぐっと歯を食いしばり、頷いた。やれる。やってみせる。
……最期まで、俺は。