Adagio Cantabile 2 (ページ11)

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もう何度読み返したか分からない手紙をそっと折り畳んで封筒に戻し、額縁の前に置いた。写真の中のジェシーは、記憶の中と寸分たがわぬ姿で俺に無邪気な笑顔を向けている。それでも、もうずっと、彼が甘ったるい声で俺の名前を呼ぶこともなければ、俺の声が彼に届くこともない。

込み上げてきたものを押し殺すように目を閉じる。
会いたくて仕方なくて、毎日毎日夢を見ては泣いてしまうような日々はとうに過ぎ去ったというのに、今でも時々、何故どうしてと泣きわめきたくなる。

「――会いたいよ」

こぼれ落ちた本音とともに零れ出たひとすじの雫を拭うことすら億劫で、そのままベッドへ倒れ込むように横になった。

——願いが叶うのなら、もう一度ふたりで生きてみたい。

鮮明だったはずのふたりの想い出は、年毎に遠くのものになってしまう。それはまるで、完成された絵画の上に絵の具を重ねていくかのように。繋ぎ止める術はなく、ただ指の間からさらさらと滑り落ちていく砂みたいに、ゆっくりと、確実に失われていくのだ。

まだ俺は覚えてるよ。全部覚えてるよ。

……忘れないよ。