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−大倉side−
「あっ...しもうた
今日、診療の予約10件入っとるんやった」
俺はいつもの早朝、そんなことを呟きながら
少し早く家を出て車を走らせる
真夏の柔い日差しを感じながら、道を急いだ
ガララッ
まだ誰も来ていない、静かな部屋
「よし！やるか！」
カルテを手に取り、患者の病状を見て
処置を考えながらも処方箋の準備をした
どれくらいの時間がたったんやろ
不意に、勢いよくドアが開く音がして
ふと視線を向けてみたら
いつもより早く着いたAちゃんがいた
「おお、Aちゃんおはよ...
ってどないしたん！？」
でも、よく見たAちゃんの姿は
顔真っ赤で、汗だらだらで、息も切れてて
尋常じゃない何かを感じた
「顔真っ赤やで！？
熱中症か？すぐ冷やさなあか...」
A「違うんです」
違うって...？
少し黙ったあと、意を決したのか
Aちゃんはこう言った
A「朝、ストーカーされていて」
...え？
「はっ？ちょ、え！？」
A「逃げてきたんです
でも、凄い大勢の視線を感じました」
それめちゃくちゃやばいやん！
それにそんな1人で逃げるなんて危ないやろ！
「そないなことがあったんか...
男？女？心当たりはないん？」
A「はい」
俺はどうしたらいい？
ここは安全に、警察に届けるか...
でもまだ相手が特定出来へんから
警察も動きようがないねんし
A「...ｯ、」
「！」
Aちゃん...今もう顔真っ青やし
肩、震えてる
そりゃそうや
ストーカーになんて合って
普通でいられる訳あらへんよな
「Aちゃ...」
あかん
抑えろ俺
震えてるAちゃんを不意に
抱きしめようとしていた自分を、止める
やっぱりAちゃんをほっておけない
俺は、Aちゃんを守りたいんや
ストーカーのこと、こんな俺に
辛い思いのなか必死に伝えてくれて...
ありがとな
俺も新たに決意を固め、言った
「とりあえず、今日終わったあと
1人で帰るのは危険や
俺Aちゃんと一緒に帰る」
A「そんなッ、申し訳ないです！」
「だって、俺のこと信頼してくれたから
このこと話してくれたんやろ？」
そして言いたかった言葉を、最後に告げる
「だからこのことはまだ誰にも言わへんでな
2人の秘密や、俺がAちゃんを守る」
だから、もう安心してええんやで
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作者名：トン助。 | 作成日時：2015年4月17日 22時
