五 ページ7
うるさいな、心臓。
あーあ、嫌な冷や汗が。
なにこれ、なんていえばいいのかわかんなくなっちゃったよ。
「おーい?大丈夫か?顔色悪いけど。」
ねえ待って、あなた侑一郎?無一郎?
「あ、大丈夫だけど。」
「そう。」
しばらくの沈黙。
「そこどいてくれない?邪魔なんだけど。」
不機嫌そうに言うドッペルゲンガー。
「ああ、ごめん。」
すっとわきによける。
通り過ぎていく背中を見送る。
「?こないの?」
「え?行く。」
流れでいってしまったぁ!
帰ろうか悩んでたのに。
「棋譜、覚えてきた?」
「え?あ、うん。」
「そう。」
ガチャガチャカギを開けながら言う侑無一郎。
まじでどっちか分からない。
おでこに名前書いてほしいんだけど。
なんだかんだでテスト中。
「269」
打ち切ったあ!
「うん。あってる。」
「よし、じゃあ研究するか。」作1「研究というのは、棋譜などを研究することです。」
「え・・・・はい。」
じゃらじゃらと石を片づける侑無一郎。
パチ
パチ
パチ
パチ
パチ
「ここさ」
え?五手目でもう研究するところが?
「こうやって白が割り込んできても、こうやって付けて伸びて・・・・白が一人になるよな。」
「ああ、確かに。ここ、とびすぎじゃないかって思ったんだけど。確かに白は入りにくいかも。」
納得。
侑一郎?と棋譜を研究している時に無一郎?は後ろで将棋やってる。
「で、ここの35,36、37,のところ。」
「え、ああうん。」
不思議な形なんだよね。
「ここは・・・・。こうすると白が逃げ切れない、ここにきてもキられて終わり。だからこうするしかなかった。」
「ああ!確かに!」
「うん。一見黒が損しているように見えるけど、白もぎりぎりかわしたって感じだから勝負は五分なんだ。」
「へー」
薄暗い部屋の中で、碁石を並べる音と、将棋を指す音が和室に響いていた。
「じゃあこれで。ありがとうございました。」
「さよなら」
部活が終わった帰り道。
夕暮れが空をグラデーションする。
「今日一日で、私強くなった。」
手に持っているのは新しい棋譜。さっき無一郎さんにもらったんだ。
新しい宿題。
なんか、なんか嬉しくなって。私は笑顔が止まらなかった。
「めずらしいな。無一郎がほかの人のこと構うなんて。」
「え?ああうん。」
「ふーん。」
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作者名:狼(ろう) | 作成日時:2020年6月3日 9時