誂えられた異世界人 (ページ11)

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9話（ローside）ページ11

…
ローside

「ありがとう。助けてくれて」

造形屋は先日とは打って変わって、俺に臆することはなかった。それどころか、力強い眼差しで、俺を射抜く。弱者だと思っていた女はもうそこにはいなかった。

「言ったはずだ。気まぐれだとな…礼なんざいらねぇ」

そう吐き捨てると、造形屋は眉をひそめる。

「別にお前の為に言ったわけじゃない。人としてお礼を言うのは当然だろ？」

人として…ね…悪党が使う言葉じゃねェな。

「海賊なんだ、人の道なんざ捨ててる」

「…別に私だって海軍みたいに大それた正義を掲げるようなやつらが言う人の道を持ってる訳じゃねぇよ…」

「そりゃそうだろうよ」

…

「ただ…素直に礼くらい言えないと…閻魔様に叱られちまうからな」

一瞬こいつは何を言っているか分からなかった。それ程までに馬鹿げた話だ。閻魔様なんざ、親が子供を躾ける為に使うもんだってのに…

「…っふ、クク」

あまりにも真面目な顔で言うもんだから、少し笑ってしまった。

「…何がおかしいんだよ」

造形屋は大して怖くもない顔で睨みつける。

「お前、本当に海賊か？」

俺の言葉に腹が立ったのか少し荒い口調で話し始めた。

「あのな、海賊だってな…人の道ぐらい持ってる。どんな悪人であろうが、1%くらいは良心を持ってるものなんだよ。そのベクトルが違ったりはするけど…悪いことをしてるって自覚してる奴とかな！自覚するのは良心があるからだし…」

「…」

「あの状況でルフィを助けたり、私の怪我まで治してくれるくらいだ。あんたは1%どころか60%くらいは良心を持ってんじゃねぇの？」

そこまで言い切ると、今まで見たことのない満面の笑みを俺に向けた。思わず、魅入ってしまった。

普段の顔に戻り、俺の様子がおかしいと思ったのか、顔を覗き込もうとしてきた。自分でも今の俺がおかしいことがわかったので、すぐに顔を逸らす。

「何で顔逸らすんだよ」

…

彼女を見てほんの少し思い出した。

〜〜
頂上戦争後の回想です