拾いませんか。 [ar×in]

23話 ページ23

「ほんっっとうにごめんなさい！」



チン、とトースターから音がする。



「あぁー、
いいよいいよ！気にしないで！」

そう言って、
あまり歩く気が起きない俺の代わりに、
伊野ちゃんが、トースターからたった一枚の食パンを取り出す。


「食パンと卵でも十分豪華だし！」

これは、気を遣ってくれているのか、本心なのか…



「うん、そうだね…


じゃ、食べよっか」

机に乗った二枚の皿の上には、
一枚は、トーストと目玉焼き、もう一枚は目玉焼きのみ。

流石に、お腹が空いているであろう伊野ちゃんより俺が多く食べるのも悪いので、
さりげなく、伊野ちゃんの方に、トーストと目玉焼きのセットの皿を置いた。



伊野ちゃんは、俺の考えを理解したのか、
あぁ！、と手をポンと叩いた。

そして、奇跡的に一枚生き残っていたトーストを手で半分に割り、

「はい！」

俺の方に置いた、目玉焼きのみの寂しい皿の上に乗せた。


「伊野ちゃん…！」

なんて優しいんだ…！

「一枚しか無かったら、半分こ！
これ、学生時代の暗黙のルールだったんだ」

…俺らは、
ジャンケンで独り占めだったわ…




「では！」

俺が言うと
伊野ちゃんが椅子に座り、



「手と手を合わせて！」


パチン、と手と手が合さる音がする。


「「いただきます！」」

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