エピソード7 ページ8
空想都市の現実化。そんな言葉が頭の中チラリと浮かび首を振って追い出した。
私は、物語の世界に入り込んだ訳じゃないんだから。
目の前で明るく笑うカズマさんにおじぎする。
ユウナさんも、警戒の色は目から消さないまま笑って自己紹介をする。
ユウナ。そう、彼女が自分の名前を口にした瞬間だった。
「……え」
聞こえてきたのは、鈴を転がしたような綺麗な声。
目を向けると、カズマさんの隣(恐らくユウナさんからは見えにくいだろう位置)にいた女の子が目を瞠ってユウナさんの方を見ていた。
そして数瞬の間を置き、ユウナさんの方へとかけよる。
気づいたユウナさんはその少女へと視線をやり、同じように目を見開いた。
「えっ、アユ?」
「ユ、ユウちゃんなんでここにいんの!?」
「……知り合いに再会したらしいところ悪いけど、ここでは相手の『本名』……フルネームは口にするなよ」
「はい? どうして……」
知り合いだったらしい、二人の再会場面に、
リヒトさんはその美しい双眸を顰め、低い声でそれだけ言う。
出会った時から頭の回転が速いユウナさんが誰よりも早く「どういうこと?」と問いかけた。
「そのままの意味。下の名前だけなら安全だけど、それもただの文字列と思え。
当人の『魔法』の解読は、込められた意味を含む『本名』が鍵になっているから」
「『魔法』って……何を急にファンタジーなことを、」
その言葉をきき、リヒトさんは「はっ」と私たちを蔑むように嗤う。
それから、そっとその白く長い指を、自分の横、
見えない壁に触れるような動きで宙に沿わせる。
瞬間、パキ、と何かが凍るような音がその場に響いた。
パキパキと、彼の指先から霜が広がっていき、
まるで硝子細工のように繊細で美しい氷の華が生まれてゆく。
月の無い夜の闇のような彼の黒髪が、
星を纏ったみたいに細氷できらきらと光った。
「『十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない』
という言葉を知っているだろう。
……100年前には超現実としか扱われなかった事象を、
人の手で操れるものにまで落とし込んだ、現代科学の結晶。
ファンタジーなんかじゃない。これが現代の『魔法』なんだよ」
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富岡圭(プロフ) - なのはなさん» ありがとうございます!後日、完成したら報告します (2017年12月30日 9時) (レス) id: b8b84b74c1 (このIDを非表示/違反報告)
なのはな(プロフ) - 富岡圭さん» コメントありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。 (2017年12月30日 9時) (レス) id: fffa902895 (このIDを非表示/違反報告)
富岡圭 - 週刊DREAMという雑誌の企画で「2017作品まとめ」で紹介したいんですがよろしいでしょうか? (2017年12月29日 23時) (レス) id: b8b84b74c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なのはな | 作成日時:2017年12月3日 21時