【東海オンエア】きっと明日の夢は見ない

ep.17 優しさ ページ21

コンビニを出て、１時間くらい走った気がする。





時刻は深夜２時。


としみつくんに迷惑かけてるし、そろそろ帰らないといけないけど、今はてっちゃんに会いたくない。








「もういい時間だけど、どうする？」








「どうしよっか‥。」








帰りたくない。

そんなこと、言えるわけない。


なんて返そうか迷っていると、近くの駐車場に車を停めるとしみつくん。

どうしたんだろう‥








「なんかまだ喋り足りないし、ちょっと話すか。」








「、うん！」








としみつくんからそんなこと言ってくれるなんて。

それともあたしが言いづらそうにしてたのに気付いて、気を使ってくれたのかな。







それから２人でたくさんお話した。

動画での裏話、好きな音楽、学生時代の話。

本当に他愛もない話ばっかりだけど、すごく楽しくて、今だけはてっちゃんのことを忘れられた。









「あれ、携帯鳴ってない？」









ポケットから鳴る微かなバイブ音に、としみつくんが気付いた。


車のエンジン音でとしみつくんには聞こえてなかっただけで、実はずっと鳴ってた。


多分、てっちゃん。









「ん、いいの‥」









「そっか、ならいいけど。」









「‥ねぇとしみつくん」









「ん？」









「どうして何も聞いてこないの？
電話の相手とか、泣きそうになってた理由とか、」









「聞いてほしいん？」









「それは‥」









「Aが聞いてほしいなら聞く。俺から無理に聞いたりはせん。
Aが話せるときが来るまで待つよ。」









そっか。

何も聞いてこなかったのは、としみつくんなりの優しさだったんだね。



としみつくんのその言葉に、その優しさに、耐えていたものが一気に溢れてきた。



泣いてるわたしの横でとしみつくんは、困りながらも優しく頭を撫でてくれていた。

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