【東海オンエア】きっと明日の夢は見ない

ep.9 きっかけ ページ11

としみつくんのこと好きだけどね





あの日以来その言葉がぐるぐると頭を巡る。

もちろん友達としてってことくらい分かるし、何気なく言った一言だってことも分かってる。

でも女性経験がほとんどない俺からしてみれば、その何気ない一言がAのことを、気になる存在、くらいまで昇格するには充分すぎるくらいの一言だった。



まぁ別に、ただ気になるかもってだけで、それ以上の感情なんて無いんやけど。








「としみつくん！」





「うおっ！！」









後ろから大きな声で呼ばれた。

今まさに考えていた相手に呼ばれたもんだから、思わず大声が出てしまった。

バカ恥ずかしいやん俺‥







「いきなり大きな声で呼ぶな！」






「何回も呼んだのに気付かないとしみつくんが悪いんでしょー！」







「嘘、全然気付んかった‥」








「何考えてたの？」








Aのこと。

そんなこと言えるはずもなく、俺は何て言えばいいか分からず黙ってしまう。








「‥顔、赤いよ？」








返答に困っていると、心配そうにAが俺の顔を覗き込んできた。









「ば‥っか、お前！！！ちけーわ！バカ！！！」








「ちょ、バカバカ言いすぎ！」









そんなん！Aが悪いやろ！！
無防備すぎるこの女！！！




自分でもびっくりするくらい心臓がばくばく言ってる。
ダメだ、何だこれ。








「変なとしみつくん」






そう言って目を細めて笑うA。






「っ、」






好き、


その一言が頭に浮かんだけど、すぐに勘違いだと掻き消した。


俺が好きになるわけないやん、第一てつやの彼女やし、ありえんわバカ。







一生懸命自分にそう言い聞かせた。



バカうぜぇくらいに心臓の音が耳に響いたけど、それも全部気のせいに決まってる。

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