マチノソラ23

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20時すぎ、玄関が開く音がしてキーボードを打つ手を止めて部屋から顔をだした




「おかえり」


「ただいま」




手にはビニール袋。
そのままキッチンに置けば何やらガサガサ出していて




「何か買ってきたの？」


「うん、Aに良さそうなコーヒー見つけて。飲まない？」


「飲む！最近コーヒー多いね？」


「ちょっとねー」


「あれ？今日は豆からじゃないんだ？」


「今日のは豆じゃないやつなの」




最近本格的な道具一式を揃えて何度も練習してるのは
多分今度そういう役があるんだろう。


一杯のコーヒーを入れる所作は丁寧で綺麗で
何だか時間がゆっくり流れるように思えてホッとする



でも今は、わざわざ自分の事を考えながら選んでくれた事が嬉しくて




「ふふ……いい香り」



「はい、お待たせしました。」



「………ブラック…？」



「多分飲めると思うよ」



「……頂きます…」




恐る恐るひとくち飲めば




「…ん！美味しい！けど、これコーヒー…？」




コーヒーというより………濃いお茶？




「ふふ…これはタンポポコーヒー」



「タンポポ？」



ほら、と持ち上げられた袋を見れば
パッケージには確かにタンポポのイラスト



「別名ダンデライオンティーって言って、焙煎した
タンポポの根っこを使ってるんだけどむくみとか貧血にもいいんだって。あ、カフェイン入ってないから夜にたくさん飲んでも問題無し」


「へぇ〜いい事だらけの飲み物なんだね。うん、言われてみれば何か自然っぽい味がする」


「砂糖とミルク入れてみる？」


「みる！」




たっぷりの砂糖とミルクを入れて
カフェオレ風にしてくれればスッキリ美味しくて




「ん〜〜これすき〜〜」


「ふふ…ポット入れとくからいっぱい飲んで。何か書いてたんでしょ？」


「倫也さんは飲まないの？」


「俺は仕事場で結構飲んできたから」




ミニポットにカフェオレ風にしたのをトポトポ注いで部屋に運んでくれれば、俺はゆっくり湯船つかってくるから書いててと出て行った




「えへへ……おいし…」




幸せな気分でさっきの書き物の続きを始めれば




「んー………こうかなぁ…」




あまりしっくりこなくて最初から読み直す




「ここちょっと間を作りたいんだよなぁ…」




進まないとコーヒーに手が伸びて、そうすれば思考がちょっとリセットされてまたアイディアが出てくる

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