マチノソラ21

1099〜須藤side〜 ページ1

「……ごめん、本当はこないだちょっと当たった。」


「？」



倫也さんはぐいっと残った液体を片付けた



「…実際ヤキモキしてて。関係言えないの。…あーいう事あると特にさ」



「………やっぱ言えないんすか…まだ」




頬杖をついた倫也さんは難しい顔をして視線を逃した


俺達とは違う、プライベートな事も自分だけの判断では決められない世界に生きている事をこういう時に
改めて知る。




「……大丈夫っすよ。Aさんは」



「俺が大丈夫じゃねぇの〜。皆ちゃんと左手の薬指見ろっつーんだよ…」



「あははは！」





お互い微笑みながらワインを注ぎあって
この間と違って沈黙が心地良いのは、倫也さんの醸し出す空気が今日はゆるいからなのもあるけど



「…もーすぐ誕生日終わっちゃうね」



言われて頬杖をついたまま時計を見れば
一日の終わりが近づいてきて温かい気持ちになった




「………何か…いいっすね…。誰かにおめでとうって言って貰えんのって」



「うん？」



「…自分が生きてる事を一緒に喜んでくれる人がいるって…贅沢だなぁって…」



「………ふふ…そうだねぇ…」




ワインを回せば自然と頬が上がる



「あ、泣く？」


「泣いてほしいんすか？」


「泣いてほしい」


「あはははは！」


「どーやったら泣く？」


「こないだは泣きそーでしたー」


「あれはお前が悪いんだろ？」


「あ〜楽しかったなぁ〜Aさんとデ〜ト〜」


「お？何だまだやる気？」


「ふふふ……海外とか行けば？」


「？」


「海外なら手繋いでデートしても日本ほど目立たないかなぁって。ってまぁそこまで行くのが大変か」



「…………」



「ん？」



ワインを飲みながら正面を見れば
ぽかんとした顔をして俺を見ていた



「……………そうだよな……」



「倫也さん？」



「海外…そうか海外行けばいーのか！」



「いや、例えばですよ」



「ありがとう須藤くん！」



「でも海外にも日本人はいるんで「Aパスポート持ってんのかな、あれどれくらいで作れるっけ？」


「………」


「今度海外ロケあんだよねそう言えば！有給ってどんくらい前に言えば取れる！？あ、Aって英語喋れんのかな！？」

　

「ふふふ…」



子供みたいに目をキラキラさせて喋り出す倫也さんが可愛くて手酌で入れれば中身は空になった




「あ、なくなっちゃった？」



嬉しそうな倫也さんはキッチンに歩いて冷蔵庫を開けた

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