マチノソラ17

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玄関から見えるリビングはシンとしていて、コートを脱いでリビングに入ればカーテンが揺れて窓が僅かに開いていた



「……ただ、いま…」


カラ、と半分閉められた窓枠に少し手をかけてベランダに出る



「…………おかえり…」



ふかす煙草の匂いに沈んだ声

そして合わされない視線



「……ごめん…」


「………」


「せっかく、デートだったのに…」


「………」



コートを脱いだ身体には冷たい冬の風が辛くて、
無意識に腕をさする


黙ってタバコの火を消した倫也さんは目を合わせないまま私の腕を引いて中に入った


カラカラと窓が閉められて
部屋の暖かさに少しだけホッとする



「…俺も、電話途中でごめん」


「いや、私こそ…」



ソファに座った倫也さんの隣に座る



「…… 頭冷やしてた」
　

「え？」


「元はマトモにデートできねぇ俺のせいなのに、
ごめんね」


「っ、そんなこと…っ！」


「あるでしょ。…ふふ…ごめんね不自由で」



そんな事言わせたかったわけじゃない

ただ楽しい時間を、二人にできる形で過ごしたかっただけなのに



「何も食べないで来たんでしょっ何か作ろっか」



明るい声で立ち上がった倫也さんの表情は見えなくて

後ろからぎゅっ！と抱きつけば、倫也さんの身体は凍るように冷たい。

一体どのくらいの間ああしていたんだろう

あの寒い中、一人で、どんな気持ちで



「違うっ、不自由なんかじゃないっ！」



倫也さんはお腹に回された私の手を優しく包んで


「……うん」


その声に自分が思ってる以上に傷つけた事がわかって
バカな自分に後悔して嫌気がさして、情けなくて


「倫也…っ、」


でも何て言っていいかわからなくて



「…大丈夫。もういいから」


「やだ！！」


「………………何が」


「大丈夫じゃないじゃん！めちゃくちゃバカだけどそれくらいわかるっ！」


「………」



「…っ、こっち、向いて」



手を離せば、ゆっくり振り向いた倫也さんの顔は、
やっぱり全然大丈夫じゃなくて


「…っ、ごめん私、」


「…Aは悪くないよ」



微笑んだ顔は、笑ってるのに悲しそうで



「聞きたい…」


「ん？」


「…今…倫也さんの心の中、何て言ってるか……知りたい」



見上げれば、困った顔をして



「……いい事ないよ、そんなん聞いても」


「私には言えない…？」


「………、ううん…」



倫也さんは、ソファ座ろ と私の涙を指で掬った

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