マチノソラ16

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ガチャ、と遠くに玄関が開く音と、ただいまーと伸びた声


リビングに一度遠のいた足音はすぐ寝室に戻ってきて
今度は近い距離で扉の開く音が聞こえた


「A？」


「……」


布団にくるまって寝てる私は答えない


「ねぇ。」


「……」


「ね・え・っ・て・ば。」



ぐいんっと布団を強引に引き剥がされて



「っ寝てるんだから起こさないでっ！」


「まだ8時前だよ？」


「……っ、」


「プリン買ってきたの。食べよ」


「………、」


「先シャワー入ってくる」



部屋を出て行く倫也さんを見届けて
諦めて部屋を出た







.








「ぷりんぷーりんまるごとぷりんっ」


それメロン……


上機嫌でバスタオルを肩にかけてやってきた倫也さんは冷蔵庫を開けた



「紅茶いれる？コーヒーがいい？」


「……いらない」


「紅茶ね。」


「……」



ケトルに水をセットした倫也さんは
先にプリンをソファ前のローテーブルに置いた



「……今日、須藤から…連絡きた？」


「須藤くん？きてないけど。なんかあった？」


「……いや、大丈夫」



倫也さんはふーんと言いながらキッチンに戻って、
カチッと音がすれば、わずかにアールグレイの香りが漂ってくる


「はいどーぞ」


カタ、とマグカップを置かれて、
頂きまーすと横に座った倫也さんはスプーンを持った


私もスプーンで一口掬って食べれば
程よい甘さが広がって少し落ち着く






「ねぇ」






プリンに視線を落としながら言われて、
チラリと倫也さんを見る






「おねしょってさ、潮吹くのとなにが違うの？」





「ーーぶふッッ！！ッゲホゲホッ！！」




プリンにむせれば、大丈夫？と紅茶を差し出された


それを受け取って口をつけようとしてから、置いた。



それを見た倫也さんは自分の紅茶に口をつけて


「成分とか違うのかな」


「っ、何…やめてよ……」


「ん？すげー気にしてんだろうなーって思って」


「……っ、」


「でも紅茶も酒も好きじゃん。一生飲まねぇの？」


「………」


「来週旅行もあるんでしょ？酒飲むんじゃないの？」


「…………」


「だったら今から大丈夫だったーって安心作っといた方が良くない？せっかくの旅行、もしそーなったらどうしようってドキ ドキして行くのしんどくない？」


「………うん」


「ね。じゃ、はい。」


再び紅茶を渡されれば、一瞬迷ってぐいっと飲む



「ふふ…酒もいっとく？」


「………うん」

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