マチノソラ15

764 ページ4

目をティッシュで拭いてくれた倫也さんが立ち上がってキッチンに向かった








足……早いの……？









「ーーーッダメッッ！！！」


「おわっ！？」


少し開かれかけた冷蔵庫を走って行ってバタンッ！！と押さえた


「っ、びっくりした……………え？なに？」


「わ、私がだすっ！」


「なんで？」


「いいから座ってて！」


「……………うん……？」



キッチンから出て行った姿を確認して冷蔵庫を開ける


さっきの小箱に手をかければ



「……っ！！」



上からガッ！と扉を押さえられた



「新しい酒でも隠してんの？」


「違うっ！離してっ！！」


「慌てちゃって。なんかありますーっつってるようなもんだよそれ？なに？」


「だめ！みないで！！」


「……………あ。」


倫也さんが手を伸ばした


「だめっ！ちょっとっ！！」


冷蔵庫の奥から例のボロボロケーキがでてきて


「……………作ってくれてたの？」


「ちがう！失敗したから！食べれないやつ！」


「なんだ、忘れてないんじゃん。」


「捨てる！捨てるから！」


「俺これ食べたい。」


「ダメだってば本当に失敗したの！」



倫也さんは包丁も使わずにガブリと噛み付いた



「あ……………」


「ん…………」



もぐもぐとリスみたいにほっぺを膨らまして



「んまいよこれ。下サクサクだし甘さも丁度いい。」


「〜〜〜〜〜〜っっ、、、」


「ふふ………手作り嬉しい、ありがと。」



頭をポンポンされれば涙がまた溢れて



「あぶらっ……分離、して………」


「そうなの？本当にうまいよ。食ってみ。」



二口目を頬張った倫也さんは私にケーキを向けた


カプ、と控えめに齧れば


「……………うん」


脂が完全にないわけではないけど、言われないとわからない程度。


「ふふふ……これ全部食べちゃっていい？」


「あ……、うん…………」


倫也さんはキッチンに立ったまま、うまいうまいとぺろりと平らげた


「ごちそーさん。」


「……………どういたしまして……。」

765→←763

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す