マチノソラ15

782〜倫也side〜 ページ20

「あー……、、だめだ……………。」



翌朝、まだ寝ている彼女は夢の中でも泣いていたようで枕がわずかに濡れていて

俺が起きた時にはもう別の夢を見ているのか穏やかな寝顔でスヤスヤと寝息を立てていたから、髪の毛に
キスを落として気持ちを切り替えて仕事に向かった。






……………はずが、そうでもなかったらしい……。




寝不足ですか？とか、今日お腹でも痛いんですか？とかメイクさんや共演者に聞かれるくらいには合間合間にボーっと考えこんでしまっているようで。


あからさまなミスやトチリはなかったものの
自分の中では今日は持っていかれすぎだ。





気持ちが急いて、仕事が終わってすぐに帰ってくれば彼女の部屋からは昨日と同じすすり泣く声。



声のするドアを開ければ、やっぱり昨日と同じ。



「……………ぁ……おかえり…」



振り向いた彼女はボロボロと涙を溢していて



ほっとけなくて、胸が痛くて、思わず抱きしめた。




「ちょっと、倫也さん離してっ、」



「やだ。無理。俺何のためにいんの？こういう時何も出来ねぇなら一緒にいる意味ない。」



「でもっ、」



振り解かれそうな腕を更に強く締めた



「…………言ってよ。そしたら、わかんねぇけど何とかなるかもしれねぇじゃん。Aの痛みちゃんとわけて。もし俺が何かしたんなら教えて。俺バカだから言われないとわかんねぇ。」



「………………何か、したの倫也さん…？」



「だから何したの俺」



「……………ん？」



「……………ん？」



「……何の話してるの…？」



「何って……A、泣いてるから……」



「……………あぁ…、え？」



「…………え？って？」

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