マチノソラ9

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会ったのは数十分だけなのに、それだけでも心はだいぶ変わった

あれからまたしばらく経ったけど、あの日に満たされた身体と心を思い出せば、前より少し明るく見えるオフィスで背中の後輩に背中で聞く



「須藤これ明日でいいんだよねー？」


「はい」


「あれ？これの担当さん誰だっけ？」


「はい」


「ん？誰？」


「はい」


「……………聞いてる？」


「はい」


「……………、、。彼女できた？」


「はい」


「やっぱり童貞なの？」


「はい」



「……………。」




背中で壊れたロボットみたいに返事をする須藤の背後で、資料をくるくると丸めた。





ーーーバシッ！！



「っ！？痛ったぁ！！はぁっ！？何すか！」



頭を押さえて振り向いた須藤はいつも通り。



「こっちのセリフだわ。どうした今日。」

「………何がっすか…」

「上の空じゃん珍しく。なんかあった？」

「………何も……………」



須藤は頭をさすりながら上目遣いで私をじっと見た



「……………。」


「なに？」



ふいに頭をポンポンと撫でられる



「は？なに？」


「……………倫也さん、いますもんね。」


「なに？何の話？」


「なんでもないっす、仕事しましょー」


須藤はまたくるっとデスクに向き直ってキーボードを打ち込みだした


「なに今の？え？」


「Aさん電話鳴ってまーす」


「えっ、あ、お電話ありがとうございます…」



私が電話の対応をしてる間にいつの間にかどこかへ行った須藤は、なんだか今日は様子がおかしい









.









帰宅すれば、また一人の空間。

まだ慣れない静かすぎる夜の天井へ手を伸ばす


「一人暮らしの時いつもなにしてたっけ」


ソファにぐだっとだらしなくしていれば、その手を伸ばしてお菓子を食べる


一人きりだとご飯をまともに作る気にもならない



「とりあえずビール飲むかっ」



冷蔵庫から取り出せば、同時に電話が鳴った



「もしもし？」



電話の相手は最近始めた習い事の教室が一緒の人。



「今？ビール飲もうとしてたとこ。あはは、うん」

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