マチノソラ9

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練習したらとか、慣れたらとかそういうことじゃない


私には……………


「役者になったら俺と共演する可能性もあるよね。」


「……………」


「その時はAだからって俺加減しないからね。」





当たり前だ。

プロなんだ、みんな。



「……………怖い……。」


「怒鳴られんの？」



「…倫也さんと……同じ…場所に立つのが………」



「……………」


「近づきたいのに、遠くなりそう………」


「……………」


「……………倫也さんが…遠い……………」


「……………俺はここにいるよ。」



声が、優しく戻った。



「……………そういうことじゃなくて……」


「ただの同じ人間だよ俺も。」


「そうかもしれないけど…………」


「俺が役者であるように、Aには作家っていう才能があるでしょ？俺に小説は書けない。」


「……………」


「Aは好奇心旺盛だから、やりたいもの見つけたらやってみたくなるのはわかるし、出来る様になって楽しいのもわかるよ。」


「……………うん」



「………役者は、本当にやりたいこと？」



じっと目を見つめられて、考える。



「……………わかんない……」


「じゃあ文章は？」


「やりたい。」


「そっちは即答なのね。」


「……………あ。」


倫也さんの顔を見れば、少し微笑んでいる


「…映画終わって、連載も終わってね…。そっちの…文章の仕事がなくなって、そしたら……………」


「うん」


「なんか……遠くなっちゃう気がして、焦って……」


「俺と？」


「……………うん…。それで、三丘さんに、役者に向いてるって言われて、スクール紹介されて」

「スポンサーの？」

「うん……………、」

「……そんな話になってたんだ」

「………役者になったら、もっと近づけるかなって。倫也さんのこともっとわかるかなって」

「……………うん」

「今日、見学行ったの」

「……………」



「……ちゃんと、断る。」

「……………後悔しない？」

「しない。でも、決めた、別のことやる。」

「……………なに？」

「秘密。でも大丈夫だから。待ってて。」

「待っててってなにを……」




「よしっ！寝るーーっっ！！！」



涙目のまま両手を突き上げて立ち上がれば、長い間ずーっとかぶっていた薄い殻がバリッと破けた気がした


「え、ちょっと……」


「一緒に寝る？」


「…………………………寝る……。」

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