マチノソラ9

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車から見えるネオンは、他人事のようにキラキラしている。

迷宮入りしそうな状況や気持ちが、進めば進むほどわからなくなっていた。


「ありがとうございました」

「こちらこそ、今日は楽しかったです。」

「夜ご飯もご馳走様でした、」

「いいえ。じゃあいい返事期待してますね」

「……………はい」


車を見送れば、小さなため息を吐く









「誰。」









低い声が響いて、振り返る


「……………おかえり……」


丁度帰って来たらしい倫也さんは帽子の下で睨んだ

ただいま、と返さないのは、今ので不機嫌になったからなのか、それじゃないのか、もうわからない

二人で無言でエレベーターに乗って部屋に入れば、
空気が美味しくなくて辛い




手を洗って、自室に逃げ込もうとすれば、沈黙は破られた


「会社の人？」


「……………映画のスポンサー会社の人」


「……………もしかしてキスシーンの？」


「うん」



倫也さんの顔が歪むのがわかった



「何でそいつといたの」


「仕事の……………」


じゃ、ないな……………


「何か、色々相談乗ってくれて」

「は？いつの間にそんな親しくなってんの」

「まだそんな親しくないよ。」

「まだ？」

「いい加減にして。」

「もう映画関係の仕事終わったよね？」

「終わったよ。全部。」



そう、全部。



「だったら何なの」

「私が誰と知り合いになろうと勝手でしょ」

「自分が見たいからってAにラブシーンやらせようとしてた男だよ？」

「あれはっ、そういうことじゃなくて、ちゃんと私を見てくれてたからでっ」


「……何言ってんの？」


「……いいよ。倫也さんには理解してもらおうと思ってないから」


「なにそれ。何を？」


「私の人生は私が決める。」









.









「……………そん中に……俺はいないの………？」









.









「……………っ、、」





言われて初めて気づく。

傷ついたような倫也さんの顔が心を抉る



大事なものは何なのか

ほしい未来は何色なのか

誰と一緒に、いたいのか

やりたい事とできない事がぐちゃぐちゃで

それを人のせいにして





「……………倫也さん、」


「……………」


「……………役者に、なりたい。」

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