マチノソラ9

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今日は土曜。会社は休み。

隣にはもう無い体温。時間は昼すぎの13時。


起き上がればズキズキと名残の頭痛が一緒に起きた


キッチンにはまたお粥が入った鍋があって、体温を測れば37.5。ちょっと下がってきた。



RRRRRR……




「はい、もしもし」





.









ただいまー

隣の寝室で喋る声が聞こえる。



ガチャ。


「…………何やってんの。」

「ごめん、急な仕事。」

「今やんなきゃいけないのそれ。」

「締め切りまであと1時間。」

「連載の締め切りまだだって…」

「だから別の仕事。作家さん飛んじゃって穴あきそうなんだって」

「だからって何でAが…」

「ごめん、時間ないんだ。」

「…………」









何とか締め切りに間に合って送信ボタンを押してから電話すれば、スマホの向こうで担当の香川さんに泣きながらお礼を言われた。


「はぁ〜〜〜久々つかれた。」


でも心地よい達成感。

頭と腕をフル回転させたのもあるのか、おでこの冷えピタはもうぬるくてズルズルだ


冷えピタをゴミ箱に捨てて椅子から降りれば、ふらっとしたけど倒れはしない。


キッチンの冷蔵庫から、倫也さんが買ってきてくれていたスポーツドリンクを取り出した


リビングのソファには、台本を見ながら背中を向ける男が一人。





うん、空気悪い。




「………………体調は。」


背中を向けたまま投げかけられる


「……良くなったよ」

「熱は。何度。」

「さっき37.5だった」

「今は。」

「大丈夫だって。シャワー入ってくる」

「熱だけ測って。」


背中を向けていた男が体温計を持ってきたけど、顔は優しくない。


渋々測ってみれば


「…………、」


「見せて」


ぐいっとまた腕を掴まれる


「……………………はぁ…。」


そりゃそうだ。一回下がったのにまた無理してなにやってんのって言いたいんでしょ。


「Aさ…」

「わかってる、ごめんって」

「わかってんならさ」

「仕事だったんだもん仕方ないじゃん」

「またそれ？Aの仕事じゃなかったんでしょ？」

「そうだけど、担当さんが……」

「そんで熱振り返してんじゃん。」

「…倫也さんはちょっと体調悪いくらいで仕事休むの？」

「俺とAは違うでしょ。」

「何それ。役者と作家はってこと？役者は代えがきかないから？そうだよね。」

「なにそんなトゲトゲしてんの。今日のは元々Aの仕事じゃなかったんでしょ」

「だとしても振られた仕事に変わりない。」

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